表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
102/106

第101話 悪役貴族、激励する ②

「リサ」


 黙り込んだままの彼女を見て、ブリジットが名を呼ぶ。

 最後の意思確認をされている。そう感じて、リサは顔を上げた。


「お姉様。リサ、やります」


 はっきりした声。

 言葉にしたことで、自分の中で何かが定まるのを感じた。恐怖や嫌悪が消えたわけじゃない。

 けれど、それよりも強いものが芽生えていた。


「よいのだな?」

「はい」

「わかった」


 ブリジットは力強く頷き、それからふっと口元を緩めた。


「リサ。お前の勇気に感謝する」

「勇気だなんて」


 リサは視線を逸らし、気まずそうに俯く。


「そんな立派なものじゃありません。やるって決めても、やっぱり怖いですし」

「それでよい」


 穏やかな声。


「恐れと共に進むことが勇気なのだ。今のお前は、十分に勇敢だぞ」


 敬愛するブリジットに真正面から褒められ、リサの胸は温かくなった。

 こうも素直に褒めてもらえたのはいつぶりだろうか。従騎士になってからは、ずっと厳しくされてきたから。


(ひとまず闇落ちルートの危機は回避できたか)


 二人の様子を見て、マルスは胸の内で安堵する。


(あとは、本当にリサの血が黄金病に効くのかどうか。それと、もう一つ)


 軽く咳払い。


「それじゃ、さっそくスージーのところに向かいたいんだけど……その前に考えなきゃならないことがある」

「どうした?」


 ブリジットが首を傾げる。

 マルスは顎に手を当て、少し考え込んだ。


「いや。これ、このまま配信するのはマズいでしょ」


 そこでようやく、二人は企画の件を思い出した。


「考えてもみて。黄金病を治す霊薬が、ヴァーミリオンの血とラストエリクサーを合わせたもの、なんて話が表に出たら……どうなるよ?」


 ブリジットの表情が引き締まる。

 リサも、はっとしたように目を瞬かせた。


「……血を狙われる」


 呟いたのはリサだった。

 さっきまでとは違う意味で、顔色がわずかに青ざめている。


「それだけじゃ済まない。最悪、ヴァーミリオンは昔からそういう異端魔術を研究していた、とか言われる可能性もある」

「……ありうるな。ヴァーミリオンには政敵も多い。事実はどうであれ、ここぞとばかりに騒ぎ立てる連中は多いだろう」

「そゆこと。ただでさえ緋々色の騎士が『呪われた血』とか言ってたし。ネットじゃもう色々燃えてる」

「じゃあ、配信しなきゃいいじゃない」

「それはナシ。ここで企画を打ち切れば、逆にあらぬ誤解を招く。スージーは助からなかった、とかね。そもそもあんだけ大口叩いといて、途中で投げ出すのはダメでしょ」

「ならば、どうする?」


 ブリジットの訝しんだ問いに、口角を吊り上げるマルス。


「脚色は必要だ。例えば……こういうのはどう?」


 そして、思い描く脚本の構想を、つらつらと口にしていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ