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どうやら、「まだ」プロローグは終わらないらしい

コインロッカーにもたれ掛かりながら話す女性と、体の後ろで鞄を両手で持ち、体を回すように揺れて話す“よし乃”がいる。


「“彼”のどこがいいの?」

「えー、どこがって、、、」


女性の話す言葉に、よしふ乃は照れるように甘えた顔を見せては困るように体を揺らしている。


「なんでいるんた?“彼”?」


コインロッカーの前で話す二人の声を聞いては僕の心は乱れてくる。「出会いがしらに落とし穴」って、さっき聞いた“ラジオの占い”を思い出しては、「この事?」と顔を歪めては、静かに自動販売機の影に隠れてコインロッカー越しに二人を覗いた。


「てかさ、あんた“あれ”はないんじゃない?」

「“あれ”って何よ?」

「言っていいの?“あの”事」

「、、、っ、“あれ”はいいの。“違う”の。私の恋は“一途”なの」

「あはは、“一途”ってガラじゃなくない?むしろ、あんたの場合“お姫さま”じゃなく“兵士”だからねー」

「ひどくない?その言い方」


二人は何かしら“共通”する言葉を使っては話をしている。僕は自分の“意思”とは裏腹に、食い入るように体を抑えては会話を盗み聞いている。



「チャチャチャッチャッチャー」

「っ!!」


不用意になる携帯の音に驚き声が出そうになった。体を仰け反らし跳ね上がるように後ろに下がってはポケットを触った。


「こんな時に、、なんでまたバイブじぁないんだよー」


焦るように体を後ろに下げ、手をあたふたとさせながら、ポケットにしまう携帯をとっては“拒否”ボタンを押した。電話なのかメールなのかを確認せずにボタンを押しては、恐る恐る自動販売機の影に隠れてコインロッカー前を覗いた。


「。。。。」


二人の姿がいなくなっている。いなくなってる事を確認しては胸を撫で下ろし、目をつぶりながら深いため息をはいた。ゆっくりと体を戻し、自動販売機に寄りかかるように体を横にもたれ掛かってはもう一度息をはいた。握る携帯を顔の近くまで持ってきては画面を開いて見た。


「始めまして。急な連絡をしてすいません。お店にて落とし物を届けて頂き、、、」


貸しレンタル店での“落とし主”からのメールだった。僕はそのメールを見てはそのままメールを閉じた。


「、、、今じゃないよ」


僕は頭を横に振り、うつむいては息をはいた。携帯を持つ手を下げては、ゆっくりと体をずらし、自動販売機を背に寄りかかりながら顔を上に天井を眺めた。


「なんで、よし乃がいたんだ?って、“あれ”ってなんだ?」


天井を眺めては二人の会話を思い返し「わかんないけど、びっくりした」と改めて深呼吸しては、心を静めた。


一呼吸ついてはゆっくりと自動販売機を後に体を動かし、歩き行く人波を見ては、自分でもわからない“笑み”がこぼれた。自分に“呆れた”のか、バレてない事に“ホッ”としたのかわからないが、“笑み”がこぼれてきた。


「なんだかなぁ。。。」


僕はそれまで持っていた“ゆっくりとしたい”気持ちが薄れては、“モヤモヤ”とする気持ちに変わっていった。


通路を歩きながら“魅惑の”のことは、もう頭にもなかった。


「どうしようかな、、、」


モヤモヤとする気持ちのまま家に帰っても、このまま“何処か”に行くのもと、よくわからない“感情”のまま歩いている。


「聞かなきゃよかったなぁ」と、何も“知る”事はなかったのだが、“隠れて聞いた”事に、自分の気持ちが冷めていった。


「あー、なんでいるんですか?休みじゃないんですか?」


うつらうつら歩く僕の後ろから呼び止めるように声が聞こえてきた。僕はその声のする方に顔を向けた。


「おはようございます。どうしたんですか?こんなところで?」


お辞儀をするように体を前に倒しては、顔を見上げながら話しかけてきた。


「え?あ、おはよう。どうしたのって別に、、、それよりも、あずみはどうしたの?」


スーツ姿で現れたあずみに返事をしては、焦る気持ちを隠すように作り笑顔を作った。


「あ、はい。今日は合同会議で、ここの近くでやってたんですよ。もしかして、忘れてる?」

「え?あ、うん。忘れてないよ、うん」


僕は、全くもって忘れていた。忘れていたというよりも、覚えていなかった。


「それはそうと、何してたんですか?」

「え?いや、別に、これといっては、、」

「そ、そうなんだー?。。。それなら、これから少し話せます?」

「え?これから?あずみはこのあとも仕事じゃないの?」

「いえ、違いますよ。今日は“会議”で解散です」


あずみは笑顔で話してきては、僕の顔を様子見するように見てきた。僕は、あずみの誘いに乗っかるように「なら、行きますか」と答えては、一緒に歩き出した。


さっき抱いた“モヤモヤ”もそのままに、僕はあずみと歩いていく。


「、、、それで、会議が終わったんですよ」


あずみは今の今まで行っていた“会議”のことを教えてくれるように、歩きながら話をしてくれた。僕はその“話”すら、余り頭に入ってこなかった。


「、、ってことなんですけど。。聞いてます?」

「えっ、あ、うん。聞いてるよ」

「えー、聞いてないでしょ?」


あずみは隣りに歩きながら「本当かな?」と、少し体を前に、疑いながら僕の顔を見ては「ま、いっか」と、旦那と“別れる”と言った前のあずみとは少し変わった口調で言葉をついては、前を向いて歩きだした。


「なんか、雰囲気かわった?」


僕は少し変わったような気がしては、余り気にしないように、そのまま前を向いて歩いていく。


駅通路の奥まった場所まで歩いては、「ここ入りましょうか?」と指をさしては、あずみは僕に言ってきた。僕は「そうだね」と返事をしては、その店に入っていった。


「いらっしゃいませ。お好きな席へ」


カウンターから爽やかな声が聞こえてくる。僕らは店の真ん中にある柱の近くの席へと足を運んだ。


「さてと、何しますかね」


僕はテーブルの上の透明のプラスチックに立てささるメニューを見ては、何にしようかと目を通す。あずみはカウンター上にあるボードのメニューを見ては「きーめた」と、頬の近くで指を立てては「決まりました?」と悩む僕に聞いてきた。「う、うん。決まったよ」とメニューを戻してはあずみに答えた。そんな僕にあずみは、「コーヒーじゃないですよね?」と、疑うような笑みを浮かべては顔を斜めに覗きこんでくる。「え?あ、うん」と、当たり前のように“決める”僕の心を見透かしてくるあずみに声を詰まらせては、「バレたか」とハットを下げては顔を隠した。


「まったく、、、毎回コーヒーじゃダメですよ」

「あははは、選ぶのは“得意”じゃないからねー」


僕はあずみの言う言葉に笑いながら返事を返しては店員を呼び、二人の注文を頼んだ。


ランチタイムを少し過ぎたこの時間では、食後を楽しむ人や休憩時間をずらして昼食を食べに来る人で客席は賑わっている。


「お待ちどうさまです。こちらが、、」


カウンターから客席の合間を縫うように店員は歩き、トレーにのせた飲み物を運んできた。左手にトレーを持ち、右手で飲み物をとっては、僕、あずみ、と順番に差し出した。店員は、二人の飲み物を置くと「ごゆっくり」と会釈をして戻っていった。僕らは互いの飲み物に目をやっては、あずみが声を投げかけてきた。


「やっぱりコーヒーじゃないですか」

「あははは、でも、これコーヒーだけど、“ウィンナー”コーヒーだよ?」

「もう、、そうは言っても、コーヒーはコーヒーですよから」

「あははは、やっぱり?」


“ウィンナー”コーヒーを指さしては“ツッコミ”をするような言葉をだしながらあずみは言ってきた。僕はそんなあずみに、カップを見せるように顔の近くまで上げて笑みを作っては、“ウィンナー”コーヒーを一口飲んだ。


「あははは、“ひげ”になってますよ?」

「え?本当?やっぱそうなるよね、、生クリームだしね。。。あ、そうそう、この“ウィンナー”コーヒーって“何処”が発祥か知ってる?」

「え?コーヒーだからブラジルとかエチオピアとか?」


ポケットからハンカチを取り出して“ひげ”を拭きながら、笑うあずみに問いかけた。あずみは、飲み物を両手で触っては目を丸くして、知り得る国名を言っては聞いてきた。僕はカップに手を添えながら目を丸くするあずみの顔を見ては言葉を繋げた。


「“ウィンナー”コーヒーは、オーストリアの“ヴィーナ”という言葉が由来してるんだ。“ヴィーナ”とは、“ウィーン風”って意味なんだけど、日本では“ウィンナー”って言葉になっていてね。それでこの“ウィンナー”コーヒーは、コーヒーにホイップクリームをのせた飲み物であるんだけど、“これ”は日本にしかないんだ。日本以外では、“アインシュペナー”や、“エスプレッソ・コン・パンナ”。あとは、少し違うけど“カフェー・ミット・シュラークオーバース”とかが近い飲み物なんだけどね。まぁ、平たく言えば、生クリームがのったコーヒーの事だよね。ただ、この“ウィンナー”コーヒーは、生クリームとコーヒーの温度差を楽しむ飲み物でもあるんだ。かき混ぜて飲むのは“ナンセンス”。まぁ、呼び名が“違う”だけじゃん?って言われれば、返す言葉もないけどね」


僕は得意気に鼻息を荒く“知識”をさらけ出しては、少し優越感に浸っていた。そんな僕に対してあずみは「へー」と感心した顔を見せながら、“よくわかっていない”感じで僕を見ている。


「う、うん。でも、“美味しい”から、“なんでも”いいんだけどね」


僕は“さらけ出した”自分に恥ずかさを感じながら、“それ”を隠すように笑い、コーヒーを口にした。あずみは“それ”を確認しては、優しい笑みを浮かべ、頼んだ飲み物に口を運んでは、両手でカップをお皿に置いた。


「ねぇ、話変わるけど、この前私が接待に行くって日に話したの覚えてる?」


あずみは、カップに手を添えながらうつむいて話しかけてきた。僕は「覚えてるよ」と言いながら“旦那と別れる”って事だよなと、頭に思い返してはあずみの方を見た。あずみは、両手でカップを持っては一口飲んで話を続けた。


「一応ね、旦那。。“彼”とは“別れる”話をしたんだ。けどね、なかなか“はい”って言ってくれなくてさ、私の話を曖昧にしか聞いてくれなくてね。言い合いを避けるように出てったりするから、もう嫌になってさ、それで、もう“行くところ”までいって話をしたんだ。まだ関係的には“夫婦”なんだけど、、もう“夫婦”ではなくなるんだ」


あずみは、左手を上げては“指輪”が無いことを見せてきた。僕は「まだ“夫婦”ではあるんだよね?」とあずみに聞いては、「でも。。。そっか」と一人納得するように呟いた。


「それでね、もう“あの”家に帰るのも嫌になっててね、新しく部屋を借りようと思ってるんだよね」


あずみは何かを吹っ切ったように顔を上げては、満面な笑顔を見せてきた。


「って言いながら、もう部屋を借りてるんだ」


あずみは鞄から財布をだしては、その中から真新しい“鍵”を手に見せてきた。


「え?“マジ”で?」

「うん、“マジ”で」


あずみは僕の言葉を“マネ”しては、「えへへ」と照れるように舌を出して笑っている。


「でも、大丈夫なの?旦那、、元旦那か、、それよりも“平気”なの?」

「うん?大丈夫だと思う。そこまで“彼”もやらないでしょ」


あずみは“旦那”のことを“彼”と言い直しては、もう“心”は離れていると、僕にもわかるように伝えてきた。


「そっか。ということは、これから“新しく”なるんだねぇ」


僕はあずみに対して“色々な意味”を含んで言葉をだした。あずみは「これからは、自分に正直になる」と、鍵を握りしめては拳を作り、勇ましく顔を上げ胸を張っている。僕は、そんなあずみを見ては笑うように頬を緩めて、“ウィンナー”コーヒーを一口飲んだ。


「あー、また“ひげ”になってるー」

「え?また?」


ハンカチで“ひげ”を拭く僕を見ては、あずみは大きく口を開けて笑っている。

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