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「ここが、アオイの部屋だよ」
そう言いながら、ミツルがアオイの部屋の扉を開けてくれた。
「この部屋で待ってればいいんじゃん?」
「ありがとう」
部屋の中に入ると、勉強机のところに観覧車で手に入れたお揃いのぬいぐるみが置かれていた。
たしかに、この部屋はアオイの部屋であっているみたいだ。
部屋の中心にあるテーブルに手作りのプレッツェルを置く。座る場所がなくてアオイのベットに腰をおろしたけど、どうも落ち着かなくて、そのままストンッと床に三角座りをした。
「(なんで、連絡返ってこないんだろ」
勝手に部屋に入ってしまっただけに、ソワソワしてきてしまった。男の子の部屋に入ったことがないから、きょろきょろしちゃう。
「男子の部屋ってわりとキレイなんだ」
机とベットとテーブル以外に、あまり装飾もなくて本棚とかもない。こんなに大きな屋敷みたいな家だし、家政婦さんとかいたりするのかな。机の上とかチリ1つないという感じのキレイさだった。
小さな頃の写真とか卒アルとか、そういったものがまったく見当たらない。
なんなら、本当にここで生活しているのかな?と思えるくらい私物がまったくなかった。アオイは、あまり実家が好きではないみたいだし、大丈夫なのかな。
アオイの部屋で1時間くらい待っていた時、外から慌てた様子の足音が近づいてきた。
「める!」
「アオイくん!おかえり、勝手にあがっちゃってごめんね」
どこから走ってきたのか、息を切らせたアオイが帰ってきた。
「でも、どうして?」
アオイは、なんで私が家に来たのかと思ったのだろう。
「今日、バレンタインだったから」
「あーそういうこと、いままで縁がなくて忘れてた」
そういうと、アオイは机の上の紙袋を覗く。そこに入っていたパンに少し首を傾げた。
「チョコじゃないんだ」
「チョコは苦手かなって思って」
「めるが作ったなら全然食べるのに」
アップルパイもチュロスも食べなかったアオイにチョコという選択肢は、あまり当てはまらないのかな?って思ったんだよね。
可愛い見た目の物を渡したかったから、チョコでもよかったのかな?
「けっこう待った?飲み物持ってくる」
「うん(渡したいだけだから、もう帰るでいいのに」
部屋を出ていったアオイは、すぐに飲み物を持って戻ってきた。
「ねぇ、バレンタインのやつ食べてもいい?」
「うん、どうぞ」
紙袋からガサゴソとプレッツェルが取り出された。アオイは一口大につまんだパンを口に放る。
「うん。おいしいよ」
「よかった」
「ほら、めるも食べてみて」
アオイがちぎったパンを私の口へと運ぶ。家で何回も試食してるから、食べさせて貰わなくても味はわかってるんだけどな。と、思いながらも口を開く。
自分が思っているよりもパンの小麦の密度が多くて喉が渇いてしまった。
アオイが持ってきたお水を飲んだ。
「作ってくれてありがと」
そう言いながら、アオイは私にキスをした。唇と唇が軽くあたってアオイの顔はすぐに離れていってしまった。




