ー32ー
「ミツルに何かされてない?」
「お化け屋敷に無理やり連れ込まれて動けなくなってただけ」
アオイは、言われてお化け屋敷を見上げる。ちょうど、巨大な目玉が出てきてアオイもお化け屋敷にギョッとしていた。
「…よく出てこれたね」
「ミ……朝日くんが、手を」
あやうくミツルくんって言ってしまうところだった。あぶないあぶない。
「もしかして、また俺は先越された?」
「え?」
「俺、めると手繋いだことないのに(てか、小指しか掴まれたことないのに」
すこしアオイが不貞腐れてしまった。そういえば、私が恥ずかしいからってアオイを待たせてしまっているのに、他の人と手を繋いでたら、そりゃ嫌だよね。
「違うよ?道案内のために手を繋いだだけで朝日くんと手を繋ぎたかったわけじゃくて」
私は、自分からアオイの手を握った。
「手を繋ぎたいって思ってるのはアオイくんだけだよ?」
手を繋いだら、繋ぎかえしてくれたけど、それでも不安そうなアオイの横顔が少しだけ気になった。
「なにか、食べる?オゴる」
「じゃーチュロスとか食べたい!あっちで売ってそうだよっ」
売店に入るといろんな味のチュロスが並んでいた。
「何味にしようーやっぱりプレーンかな?」
私が味に悩んで、どの味がいいかアオイを振り返ると、アオイは困った顔をしていた。
「え?いや、俺はチュロス食べたことない」
チュロス食べたことない人なんている??
「二本頼む??」
「あ、シナモン得意じゃないかも…」
そうなんだ。アオイは、シナモン好きじゃないんだ。
「そっかぁ、じゃブドウ味で!」
私が店員さんから商品をもらっている間にアオイが会計してくれたみたいだ。
紫色の砂糖がついたチュロスを受け取る。出来たてのサクサクがとても美味しい。なんなら、シナモンの味がしていない商品を選べたみたいで、私は自分が食べている途中のチュロスをアオイに差し出した。
「あまりシナモンの味がしないから食べてみて」
「え、いや、それめるのやつだから」
アオイは、なにやら動揺している。
「本当にシナモンの味はしないやつだよ?」
私があまりにもグイグイとアオイにすすめるもんだから、食べる気がないアオイに無理やり食べさせるみたいになってしまった。
「ぁ…うん。たしかに、うまい(間接キスしてしまったけど、むこうが何も思っていない事が、むしろ悲しい」
顔をそむけたアオイの顔が赤いような気がするのは気のせいかな。




