ー18ー
「他にも切傷とかない?」
手の表面の小さな傷を丁寧にアルコールしてくれるアオイ。
「うん。たぶん、大丈夫」
その優しさに胸が、ぎゅうっとなるような気がする。
「私、いつもアオイくんに助けられてばっかだね」
「たまたまだよ。風呂場に忘れ物取りにいったら偶然めるに会っただけ」
運動会の時も今日だって、私を助けにやってきてくれたのがアオイで嬉しい。たとえ、それが偶然だったとしても。
「懐中電灯持ってなかったから、アオイくんに会えて本当によかった」
夜に一人で誰にも発見してもらえなかったらと思うとゾッとする。
女子の寮ではないけど、ちゃんと屋根のある場所にいるってだけで安心できる。それが、アオイと一緒ならなおさらだ。
「その足じゃ寮には戻れないだろうし、ここに泊めさせてもらえば?」
アオイが寮の端にあった布団を敷き始めた。アオイは自分の寮に戻っちゃうのかな?
私は、アオイのジャージの裾を引っ張った。
「一緒にいてくれない?先生がくるまででもいいから」
「うん(俺もどうしよう」
そうこうしていると、保健の先生が帰ってきた。
「あれ?誰かいる?」
入り口の靴をみたのか、驚いた顔をした先生がやってきた。
「どしたー?」
「あの足を挫いてしまって」
先生が私の足が腫れているのを確認する。
「派手にやったねぇ、もう湿布したの偉いね!熱もってるようなら冷やす?」
先生が持っていたカバンから冷やすスプレーみたいなのが出てきた。
「どうなって転んだの?」
「えと、木の根っこを踏んだら後ろにズテンって転んで…背中うって」
「え?背中大丈夫?ちょっと見せて」
男の先生が、私の上着の裾を掴んだ。
「(えっ………」
どうしよう。と思っていたら、先生の腕をアオイの手が静止させてくれた。
保健の先生ではあるけど、下着見られちゃう?!って思ったから、私はとてもホッとした。
「えっとーごめんね。明日、女の先生に見てもらうようにしようか(なになに?朝日がめっちゃくちゃ睨んでるんだけど、二人ってそういう仲??」
保健の先生はズボンのポケットからスマホを取り出す。
「二人のことはそれぞれの寮の先生達に伝えておくよ」
本当に先生達だけが山でスマホを使えるんだ。
「それにしても困ったな。この部屋布団が一組しかないんだよ。布団は朝倉が使うとして⋯⋯」
「先生はどうするんですか??」
私が素朴な疑問を先生にすると、先生はその質問を待ってました!とでも言いたげな顔をした。
「僕は、もしものための寝袋があるからね!!」
じゃーん!と言いながら取り出したのは、黄緑色のキャンプでよく見る寝袋だった。
「意外とこれがさー温かいのよ!」
「(色的に芋虫みたいになっちゃった」
先生が器用に一人で寝袋のチャックをしめてドヤ顔をこちらに向ける。
それを見たアオイは、何を思ったのか唯一でていた顔の部分もチャックの中にしまってしまった。
「⋯これで、よし」
「ちょっと?!先生への嫌がらせ?!」
先生が寝袋の中でぴょんぴょんとのたうっている。
なんだか、人に意地悪をしているアオイをみるのは珍しいかもと笑ってしまった。
「あ⋯アオイくん、布団半分使う?」
「いや、いい」
私の提案をアオイに即答されてしまった。
「そうだよね。こんな汚れてる人と一緒とか嫌だよねっ」
「べつにそういうことじゃ(そんなことしたら、俺のナニが爆発する」
「ん?」
なんか、アオイがもごもごと言っている声が聞こえなくて首を傾げた。
「俺は、そのへんの座布団でいいから。電気消すよ」
そういうとアオイは、寮の鍵を閉めて部屋の電気を消す。
本当に寮の座布団を二つ折りにすると、私の隣に布団も掛けずに寝てしまった。
私は真っ暗闇だと眠れないタイプで、私に背を向けているアオイに思わず声をかけてしまった。
「アオイくん⋯⋯もう、寝ちゃった?」
「うん」
あまりにもハッキリとした返事が返ってきたので、申し訳なくなってしまった。
「ごめんね、ありがとう」
「⋯⋯うん」
私が小さな声で謝罪すると、アオイの声も小さく返ってきたので、眠りの邪魔しちゃいけないなって私もちゃんと眠る努力をした。




