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ー10ー

「スマホくらい持っとけよな。探すの苦労したろうが」

 ミツルはアオイにスマホを放り投げる。

「わりぃ。カバンに入れたままだった」

「めるるんも俺等とGPS交換しちゃう?」

 ミツルがGPSと言ってようやくスマホの重要さを理解した。

 こんなことになってもスマホさえあれば探してもらえたんだ。

 でも…私もアオイくんもスマホを持っていなかったのに、どうやって私たちを探しに来てくれたんだろう??

「朝日くん……ありがとう」

 ミツルは、私の反応に両手を広げてため息をついてしまった。本来なら皆が手に入れたいと思っている情報を欲しがらない私に呆れているのだろう。

 時刻は19時くらいになろうとしていた。

「そろそろ、警備員さんが入り口を閉めたいらしいよ?」

 運動会の片付けも終わった学校の放課後の現実をミツルが告げる。

「え?!私たち体操服のままっ」

「める!急ごう!」

 私は、アオイくんと一緒に自分たちの教室に駆け上がる。

 空は夕日が沈もうとしていた。教室まで来ると、カバンが残っているのは私たちだけだった。

「大変な一日だったね」

 私達が着替えて昇降口までやってくると、下駄箱のところでミツルが待っていた。

「めるるん!親が迎えに来てるから、車一緒に乗っていきなよ」

「え、いいのかな?」

 なんで、朝日家の親が迎えに来てるんだろう?

「それでさ、お兄ちゃん…今日は、なんの日か知ってる??」

「え……あー」

 ミツルが甘えるようにアオイをお兄ちゃんと言うと、アオイはバツが悪そうな顔をした。

「俺等の親って有名なバイオリン奏者でさ、俺は今日そのバイオリン教室に行かないといけなかったのを、わざわざ二人を探し回ってたんだよねー?それで、俺が家に帰ってこないもんだから、親が学校に凸っちゃったわけよ。んで、うちの兄が見つかりません!って事で、学校の先生全員に二人を探させたわけね?」

『え?!』

 どうやら、事態は私達が思っているよりも大きく動いてしまっていたみたいだ。

「そんで、俺はクラスの女の子達に何か知らない?って聞いて回って、二人を発見したわけなんだけどー激怒の母親をどうにかしてくれるよね?お兄ちゃん♫」

「……………はぁ」

 学校の入り口には、セダンタイプの車が停まっていて、髪の長い女の人の隣には担任の先生が立たされていた。

「それじゃ、失礼します」

 朝日家のお母さんが車の扉をバンッ!と音を立てて閉める。

 どうやら、担任の先生はこっぴどく絞られた後のようだ。

 私達は、3人は後部座席に乗った。

「こんな時間まで学校で何してたの?」

「学級委員は運動会の片付けとかあったんだよ…」

 アオイは、窓の外を見ながら不機嫌そうに言った。

「なんか、倉庫の建て付けが悪かったのか閉じ込められてたみたい」

 ミツルがアオイの捕捉をしてくれている。

「どうしようもない学校ね。後で文句言っておかないと…」

「………」

 車内の空気が悪くて皆が黙っていると朝日母が口を開いた。

「音楽の才能がないアンタの代わりにミツルがバイオリンやってるんだから、アンタの事で足を引っ張るのやめてちょうだいね」

「………はい、すいません」

 アオイは音楽も苦手なのかな。それにしても、ミツルがバイオリンを弾くところは想像できないかも。

「今度、うちに遊びにおいでよ。そしたら、休日のアオイにも会えちゃうよ?」

 ミツルが私の耳元で囁きウインクをする。

 私は、家まで送ってもらうとようやくピリピリとした空気から解放された。

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