表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋≠1  作者:
9/10

遠くて×近くて 前編






その人は空を見上げていた。 暗い夜空に輝く星、そのどれかを。 どこか悲しそうに、どこか愛おしそうに。 駅のベンチに座り、一人夜空を見上げるあなた。 それを眺めるようになったのは、いつからだろう。 届く距離にいながら手を伸ばせないのは、なぜ?






§§§§



起きて、仕事をして、ご飯を食べて眠って。思い描いた将来とは全く違った、普通と言う名の日常。 退屈ではない、刺激がないわけでもない。 普通が嫌なわけじゃない。 でもなぜか物足りないと感じる理由を、私は見つけられずにいた。 そんな毎日にあなたが現れたんだ。



あなたは一人だった。 鼻と耳を赤くしながら、夜空をずっと見つめていた。

(変な人がいる………)


第一印象はそれだった。 関わらない方がいい人、最初はあなたの横を通り過ぎるだけだった。 でもあなたは毎日そこにいた。 いることが当然と感じてしまうように。 いつしかあなたは私の毎日に必要な、パズルのピースのような存在となってしまった。 今日もいるかな、と期待して。 姿を見ればなぜか嬉しくなって。 当たり前の中に、あなたの存在が入り込んできたんだ。



話しかけた理由は今でも覚えてる。 あの日は大雪で、電車が2時間ほど遅れたんだ。 帰るのが遅くなる、それよりも先に出てきたのは。 今日はあなたに会えないかもしれない、だった。 電車を降りると、私の気持ちは急ぎ出した。 約束なんてしていないけど、毎日会えるってことが私にとっての当たり前になっていたから。 会えないのは嫌だったんだ。





だから…… ベンチに座るあなたを見たとき、嬉しくて少し泣きそうになったんだ。 あなたは変わらず夜空を見上げ、私はあなたを見つめてる。 このまま帰るのが惜しくて、私は自販機で温かいコーヒーを二本買った。 それを手に、初めてあなたに声を掛けたんだ。




「あの…… もし良かったら」


私の声に反応して、ゆっくりとこちらを見る。 トクン、心臓が大きく一度鼓動を鳴らした。 いつも見ていた横顔、今は真っ直ぐ見つめられる。


「…… ありがとう、ございます」


そう言って、私から缶コーヒーを受け取った。 少し口角が上がって、とても優しい顔をした。 トクン、トクン。 ゆっくり、大きく。 私の鼓動の音がする。








いつも夜空を見上げていたあなたの視線。 今は私を、見つめてる。









こちらのお話は、前後編にさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ