死にたがり×生きたがり
今日は先生に怒られた。 友達の彼氏自慢が面倒だった。 授業が退屈で仕方なかった。 はぁ、生きてるのが面倒だ。 そんな愚痴を手土産に私は病室の扉を開いた。
「今日もおつかれ、ケイちゃん」
そう言う彼はまた少し痩せたようで、笑顔もどこか無理してるように見える。 不安になってしまう、だけどそれは口には出さない。 それが二人の約束だから。
「健太〜。 生きるのめんどい、死にたい」
「あはは。 出た出たケイちゃんお得意のセリフ。また学校つまらなかったの?」
健太とは幼馴染で、小、中、高校と同じだった。 だったと言うのは、今現在健太は学校に来ていない。 詳しい病気は分からないけど、とりあえず長くはもたない。 健太本人がそう言ったんだから間違いはないのだろう。
「もー死にたい。 健太、私と変わりなさいよ。 そしたらあんたも生きれるし」
「いやぁ、僕の代わりにケイちゃん死んじゃったら申し訳ないかなぁ。 生きれるなら嬉しいとは思うけどさ」
じゃれ合うような会話。 死が迫っている人にこんなこと言ってる私は常識知らず? そうだとしても、私は健太に気を使うつもりはない。 それが幼馴染としての役目だと思うから。 健太への態度を変えるなんて逆に失礼だと思うから。
「ケイちゃんは、なんで死にたいの?」
「んー? 生きててもねぇ、楽しくないのよ。逆に健太はなんでわざわざ生きてるの?」
「んー。 両親に申し訳ないからかな。 こんな形で子供を亡くすのはやっぱり辛いかなって」
「へぇ。 じゃ健太は人のために生きてるんだ。 偉いな! よしよし」
私はそう言って、健太の頭を撫でた。 私より身長高いのに、今は背伸びしなくても手が届く。
「ちょっと、恥ずかしいよ」
「照れるな照れるな! 幼馴染なんだからいいじゃん」
そう、幼馴染なんだから。
「それじゃ帰るね。 また明日」
「うん。 バイバイ」
振り返らずに病室を出た。
「……またねって言ったんだから。 バイバイで返すなよ」
それじゃまるでお別れみたいじゃん。 私はまた会おうって意味で言ってるのに。今の健太に言われると現実味があって、すごい嫌だ。
健太のことをどう思っているか。 素直な気持ちは、そう言うことなんだろう。 だけどこれを伝えるつもりはない。 いなくなると分かっていながら、そんなことを言っても。 誰も得をしない。 だから、言わない。
私と健太は幼馴染のまま。 出会った時から、いつか来る別れの時まで。 この気持ちは友情のまま。 愛情なんて名付けても、全て遅すぎるでしょ?
§§§§
「………また、会えるよね」
本当は君と一緒に生きていたい。 君にこの想いを届けたい。 だけど僕には時間が少ないから。 告白しておいて置いて行くなんて、迷惑にしかならないでしょ。 だから言わないよ、君を好きなことは。
君が死にたいと言う時、僕は最低だけど少し嬉しくなる。 君と一緒に生きれない、でも一緒に死ぬことなら……… なんて。 考える僕は最低だ。 どんなことがあっても、君には生きてほしい。 好きだから、理由はそれだけ。
「………ケイちゃん」
僕はあと何回、君を見ることができるのかな? 君の死にたいを、何度聞けるかな? その答えに、死んだらダメと何度答えるのかな。 その度に何回…………
僕は、生きたいと思ってしまうのかな。




