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恋≠1  作者:
6/10

走り出す×見つめてる






「ザーザー雨さん、やっまなっいね〜」



鼻歌交じりの雨宿り。 雨は嫌いじゃない。でも濡れるのは嫌い。 肌にひっついた制服が、なんだか気持ち悪くて。 どうしようか、歩いて10分ほどの家、走れば問題ない! なんて意気込んだのは3分ほど前。 無理! と判断して雨宿りを決めたのはほんの数秒前。 いやぁ、運が悪い! うん、今日は運が悪い日なんだ! あくまでポジティブ、それが私の長所だもん!




「河北さん?」


目の前を通り過ぎようとした男の子。 目を丸くして、驚いた顔してる。 右手には傘、男のくせに軟弱もの‼︎


「石田くんだ。 どうしたの、こんな雨の中傘なんてさして?」

「河北さん……… 傘は雨が降った時こそさすものだよ」

「ふ、甘い‼︎ 日傘の存在を忘れるな‼︎」

「まったく。 雨ごときで君のテンションは落ちないか」



あったり前! 雨は大地に潤いを与えるものよ! 恵みの雨って言葉を知らないのかい、君は!



「使う?」


そう言って、おもむろに私の隣に立ち。 まだ雨粒がついた傘をこちらに差し出す。 なんだなんだ、優しさアピールですか? ふ、ポイント稼ごうとしても無駄だよ! 第一もうこんなびしょ濡れだもん! 今さら傘が手に入っても時すでに遅しよ!


「いーいーでーすー。 あのねぇ、そういうあまずっ……… ぱい青春は! 君みたいな美男と美女がやるもんなの! 私はそういうの似合わない、てか役不足よ!」



だいたいね、キュンキュンしたいだの恋したいだのラブラブしたいだの。 そーんな脳内お花畑なまま高校生活終わらせたらもったいない! 恋はセルフサービスよ、ご自由にどうぞよ、強制じゃないの! 若いうちは遊びに全力を尽くすべきなの!





「そう? 僕、河北さんはとっても可愛いと思うけど」

「……… ごめん。 私、耳がおかしくなったかも。 幻聴が聞こえてしまった」



なんか可愛いとかありえない言葉が聞こえてきましたけど? 聞き間違いでしょうね、本当ありえないもん。 ワタシガ、カワイイ、アリエン。


不意に耳に息がかかり、私は素早く身体を横にずらした。 見れば、石田くんの顔がほんともうビックリするくらい近くまできていた。な、なななになになに⁉︎ どどどどドッキリ⁉︎



「聞こえなかったなら、もっと近くで言おうかなって」

「な、ななににを⁉︎」



「………っ。 河北さんは、可愛いよ」




そう言った彼の顔は真剣で。 そんな彼を見ている私は、いっぱいいっぱいで。 なんでか分からないけど、顔が引きつる。



「河北さん?」

「………そ、そ……」

「そ?」






「……… ‼︎ そ、そんな言葉に‼︎ コロっと落ちると思うなよぉぉ〜‼︎」



私は精一杯の捨て台詞? をはいて、その場から全力ダッシュで逃げ出した。








§§§§






「はっはっは。 ついに奈子にも春が来たかぁ」

「いやいや今は真夏ですよ?」

「いーじゃん、石田くん。 女子に人気あるよ、美形で優しいって」



そんなん分かってるよぉぉ…… まさか友達に私がこ、こ、恋のお話をする時が訪れてしまうとは。 人生なにがあるか分からんね、ほんとに。



「で。 奈子、どうすんの?」

「………どうすればいいのぉ? 分かんないよぉ……」

「告白まがいのことをされたんでしょ? いいじゃん返事すれば」

「か、かかか可愛いと言われただけでですね! け、けっしてお付き合いとかそういうのじゃ!」

「……あんたねぇ。 なーんでこんな時だけチキンなの? いつもなら、よしやってやる!とか言えるのに」

「だ、だってぇ………」



男の子をそういう目で見たことないし。 恋愛とか、私には無縁だと思ってたし。 いつかは誰かを好きになるさ‼︎ なんて考えてはいたけど。 ………ま、まさか男の子から告白? されようとは。



「もう! いつもの河北 奈子はどこいった! あんたは考えるよりまず行動! なはずでしょ! あれこれ考えず、直感でいきなさい!」

「…………!」



そうだよ。 なにを悩むことがあるんだ。 今まで私は、思ったように行動してきたじゃん。 それが恋愛だろうと、変わる必要ないじゃん!


「……… よーし! 私、頑張っちゃうよぉ‼︎」

「うん、その意気だ!」

「まず明日! おはようって言う! それから帰るとき、またね!って言う‼︎」

「………ハードルひっく。 まぁ、あんたがそれでいいならいいけどさぁ」

「うん! 見とけよぉ、石田くんめぇ!」




今までそんなこと考えたことなかった。だから……加減なんて出来ないからなぁ! 走り出したばっかりなんだ、捕まえるまで、止まるなんて無理なんだからね‼︎







§§§§§







雨の中、走り去る女の子。 顔、真っ赤だったなぁ。 ………やばい。



「あんな顔見たら、もっと好きに、なっちゃうでしょうが」




誰にでも優しくて。 壁みたいなものがなくて。 男子でも女子でも気軽に話せる存在、それが僕の好きな人。 ずっと見つめるのは気持ち悪いかな、そう思いはするんだけどさ。 条件反射みたいなものなんだよ、これは。 君の声が聞こえるとね、まるで忠犬のように君を見てしまうんだ。 好きなんだ、君が。



でもさ。 君は恋愛とかまったく興味なさそうだから。 気づいてる? いや、気づくわけないか。 君が男子と話すのを、僕は面白くないとか羨ましいとか複雑な感情になって見てしまってるのを。



だから今日、雨宿りする君を見つけて。 すごいチャンスだと思った。 初めて君と、会話が出来た気がした。 可愛いと、言えた。 君の横顔を、あんな近くで見ることが出来た。シャンプーの香りがした。 少し濡れた髪は………



「ああぁ……… キモいな、自分。 変態だ、すごい変態だ」




でも、がんばった。 流石にあの河北さんも、僕のことを少しは意識して……… くれると信じたい。



「はぁぁ……」


空を見つめる。 やまない雨、薄暗い空。 手には透明な傘、隣にいた君は走り去って、もう見えなくなった。



「相合傘……… とか。 期待したんだけどなぁ」



ため息まじりに傘を開く。 ポツポツ、傘を雨粒が叩く。 雨は好きではない。 好きではないけれど。





河北さんと二人っきりになれたから。 少しだけ、今日は感謝してみた。











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