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恋≠1  作者:
5/10

背負う×支える

久しぶりの更新となります。






「私のこと、好き?」


真っ直ぐな瞳で僕を見て。 緊張していたのかな、少し声は裏返っていた。 君を女の子だと初めて思った。 いや、違うか。 今のままの関係を壊したくなくて、思わないようにしていたんだ。 君とは友達でいたかった、もし恋になってしまえば。 それは同時に、終わりがあることを受け入れなければならなくなるから。


だから僕は逃げた、君の好意を受け止めもせず。 卑怯だと分かっていながら、君から目を背けたんだ。


今になって思うんだ。 伝えるために言った気持ち、それが受け止められなかったらさ。その気持ちは消えていくのかな、それとも残り続けるのかな。もしも残り続けるなら…… 音なんて聞こえないけれど、僕が受け止めなかった君の気持ちは。 あの時落ちてしまったのかな。 僕が拾わなかった、拾えなかった気持ち。 それが今も残っているのだとしても。 それを僕が触れるなんて、出来ないよね。






§§§§





「ねぇ! 小野田くん、聞いてるの⁉︎」

「聞いてるよ、新人が生意気って話でしょ?」



小野田くんはそう言うけど、さっきから相づちしかうたない。 本当に聞いてるのか怪しい、適当に合わせているのかもしれない。 もしかしたら面倒と思っているかも。 でも私も愚痴を言いたいからやめる気はないよ。



「まぁ桐川さんも入社した時はそんなもんだったんじゃないの? 頑固なところ、あるからなぁ」

「ぜんっぜん! 全く‼︎ 私は教えてもらう立場をしっかり理解していたもの。 怒られるのも、ネチネチ嫌味を言われることも! 感謝の気持ちを持って接してきたの!」

「ふーん……」



まただ。 ふーん、とか。へぇー、とか。なんだか曖昧な返事をする。 面倒なら帰れ! なんて、呼び出したのは私だから言えない。 言えないからとりあえず……… お酒のペースを早くする。 イライラした時は、飲んで忘れろ! 今もお世話になっている上司からのありがたい教えだったりする。









§§§§§




「飲み過ぎだよ」

「んー…… あは。 小野田くん、眼鏡かけてるぅ」

「酔っ払いは面倒に思われるよ。 ほら、立って」



そう言って、手を差し伸べてくれる。 素っ気ないけど優しいんだ。 そう言うところが、学生の頃好きだったなぁ…… お酒のせいかな。 少しだけ…… 甘えたくなった。



「歩けない。おんぶ、して」

「……… はぁ。 しょうがないね、君は」



そう言って、私を背負う。 私は小野田くんにしがみつく。 触れて分かることってあるんだね。 大人になって、お互い変わったのかもしれない。 でもね、当たり前のことだけど。 小野田くんは、小野田くんだね。 そう思うと嬉しくなって……… 抑えてたものをこぼしてしまった。




「んあぁ。 飲んだなぁ、今日は!」

「君はいつも後半ペースが速くなるからね。でも少しは身体に気をつけなよ?」

「だいじょーぶ。 困ったら小野田くんを呼ぶから!」

「こうやって毎回送らなきゃいけないの? それは、大変だなぁ……」




彼の困ったような、でもどこか楽しそうに笑う顔。 私は、君の背中に顔を当てる。 どんな顔になってるか分からないから。 でも一つ分かるのは。


お酒のせいじゃなくても。 私の顔は真っ赤だってこと。






「んー、あれだよ? もし小野田くんが良いなら、一生私のこと背負っても…… いいよ?」




おかしいね。 あの時は小野田くんの顔を見て、素直に聞けたのに。 今はお酒に頼って、それでも濁した言葉でしか聞けない。 私はあの頃より、臆病になったのかな………



「一生背負うは、無理かなぁ」

「……だよね! こんな女、嫌だよねぇ!」

「そうじゃなくて。 …… 僕はあの時、桐川から逃げたんだ。 そんな僕じゃ、桐川さんのこと背負えないよ」




……… 本当に真面目だね。 だからこそ、惹かれたんだけど。 私が初めて、気持ちを伝えたいと思った人。 あの時受け止めてもらえなかった気持ち、消さずに残していたけれど。やっぱり、ダメなんだよね。時間が経っても、お互い大人になっても。 小野田くんと私は、そういう運命なのかな。



「………冗談冗談! 流石にフった相手は気を使うよねぇ! ごめんね‼︎ 酔いすぎたね!」


明るく振る舞うよ、私は。 小野田くんに言われたの覚えてるんだ。 桐川さんは明るくて面白いって。 そんな普通のことも、君に言われたら大事な個性だと思えたから。 泣いちゃったら、困るよね。





「………一生背負うは、無理だけど」

「いいよいいよ! もうこの話は終わりでーー」




「背負えないけど、支えるよ。 桐川さんがいいって言うまで、ずっと」









君の言葉は、星空みたいに綺麗だね。 綺麗だけどーーー



私はまた、小野田くんの背中に顔を当てる。



「……ちょっと、大きい声出し過ぎたかも。おとなしくなるねぇ」

「うん、分かったよ」







小野田くんの声を聞いて、ゆっくり目を閉じる。 背負えないけど、支える。 それはとても優しくて、とても残酷だね。 もう君に「好き」だと言えないってこと。 残していた気持ちを、消さなければならないということ。







頬を伝う、冷たい涙。 感じるのは、君の温もり。 時間が止まればいい。 このまま、世界に私と小野田くんだけになればいい。 そうすればこの温もりが、離れることはない。 でもそんなことはあり得ないから。







きっと、最初で最後になる温もりを。 終わらないでと願いながら………








ありがとうございました。

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