恋の予感?
下村一輝が電話に出た。
「あの……詩織です。」
(詩織さん! いやぁ~、嬉しいな。電話を貰えると思ってなかったから……。)
「友達に話して、友達がお断りしたいと……。」
(そうでしょうね。……というか……嘘……というか…。)
「嘘?」
(詩織さんの個人情報を得たかったから……嘘つきました。)
「なんて人なの!」
(詩織さん、最後まで聞いて!)
「聞く必要あります?」
(あります! とっても、あります!
電話切らないで最後まで聞いて!)
「…………酷いわ。ちょっと心配したのに……。」
(詩織さん、友達の見合いが最初ではなかった。)
「どういうことですか?」
(前に一度、見かけた。
その時、君は妊娠中の後輩の面倒を看てた。
君の会社の人とは仕事上での付き合いがあって……
前の会社で……。
退職前に飲んだ時、たまたま君も宴会で店から出て来た。
妊娠中の後輩の具合が悪くなってたみたいでタクシーを呼んで……
タクシーが来るまで傍にいた。)
「そんなこと、あった?……あったわ。」
(君の会社の人が言ってた。
『お局様とか言う後輩もいるようだけど、とても優しい先輩だ。』と!)
「えっ? 私……やっぱり、お局様なんだ……。」
(そこ?)
「あ……続けて。」
(その日から、君のことが頭の片隅にあったんだ。
それから、友達の見合い相手の写真を見せて貰ったんだ。)
「写真? 私は見てなかったけど、あの方は見たのね。」
(そこですか?)
「あ……済みません。」
(聞いてます? 僕の話を……。)
「聞いてます。」
(僕は写真を見て、君だと分かったので『会いたい!』って思って……
友達が話は流れたと聞いて『会いたい!』って頼んだので……。
今日も有馬温泉に行くって知って、たまたま神戸に出張中で会いたくて、
『ご挨拶したい』って……ご挨拶ではなく詩織さんに会いたい!
電話では僕のことを知って貰えないから、会って欲しい!)
「あの……。」
(凄く気になるから……君のこと……。 会って貰えないかな?)
「えっとぉ………私は気にならないんで……。」
(そうだよね。分かってる。
けどね、恋はどちらからの片想いから始まる場合が多いよね。
駄目かな?
あ……僕は独身だから安心して! バツ1だけど……。
離婚したのが3年前なんだ。 因みに子なしだよ。
離婚理由は、会った時に話すね。)
「……私のこと知らないのに会いたいの?」
(知らないから会いたい! 会って、もっと知りたい!
良かったら行きたいな。有馬に……。)
「えっ?」
皆に聞こえるようにスピーカーにして話していたら、「来て貰え!」と書き込まれたスマホを見せた拓海君。
皆が頷いている。
流されてるのかな?と思いながら、旅館名を告げた。
(じゃあ、行っていいんだね。)
「はい。その代わり、友達も居ますよ。 男女ともに……。」
(いいよ。ありがとう!
じゃあ、10時にロビーに行くね。)
「はい。」
(ありがとう! 友達にも『ありがとう!』って言ってたって伝えて。)
「はい。」
(じゃあ、明日!)
「はい。」
電話を切ると、拓海君が言った。
「よっしゃー! 採点するぞ!」
「うん。詩織ちゃんに相応しい男かどうか、しっかり見定めないと!」
「そうよ。お兄ちゃん二人も居るんだものね。」
「おう!」
「おうよ!」
「詩織ぃ~……。」
「何?」
「恋の予感……しない?」
「別に……感じない。」
「ええ―――っ。」
燥ぐ美里、張り切る拓海君と翔太君……。
見守るその三人のパートナー。
それぞれの部屋に帰って休んだのだ。




