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明日へ  作者: yukko
45/57

断る

話ながら私は思い出していた。

思い出しただけで涙が出てきてしまった。


「ごめん………泣く気は無かったの……。」

「詩織………泣いていいのよ。泣いていいの………。」

「それで? 彼は……その時だけで終わったのか?」

「あの……その方は詩織さんの彼だった方ですか?」

「……ええ………。」

「今はどうなさってるの?」

「別れてから結婚して二児の父になったのだけど……。

 お子さんをお二人とも亡くされたの…。

 今はどうか分からないけれども、奥様は御実家に帰られてたみたい。」

「お子さんが………。」

「奥様は……お辛かったと思うの。」

「そうですね……想像できないほど……お辛かったでしょうね。」

「………別れ際に……何か言いたそうな感じだったのかな?

 聞いてて、俺はそう感じたんだけど……。」

「……分かんない……分かんないわ。

 私、辛すぎた……その気持ちと…一瞬でも会えて嬉しかった。

 いけないことだけど、嬉しいって思ってしまったの……だから……。」

「だから?」

「早く離れなくっちゃ…って、思った。」

「そうか………。」

「執着だと分かってるのに……止められないの……。」

「執着……か……。」

「叶う想いだったら……俺は応援するけどな。

 叶えたらいけない想いだからな。」

「うん。分かってる。」

「詩織ちゃんが分かってるって、分かって言ってるんだ。」

「うん。」

「超えたらいけない橋なんだ。」

「うん。」

「織姫と彦星じゃないからな。」

「うん。……拓海君、ありがと。肝に銘じるわ。」

「相手が何もしなければ何も起こらないよ。拓海。」

「そうだな。」

「詩織ちゃんは動かない。

 動く人なら、もうとっくに動いてる。」

「そうだな。お前の言う通りだ。翔太。」

「だから、拓海は詩織ちゃんに釘を刺したんだろ。」

「お見逸れいたしました。」

「ただ、もっと深い釘が必要かもな……。

 詩織ちゃん、万が一、元カレが近づいても距離を取っておくこと。

 いいね。」

「はい。」

「それしか君自身を守れないよ。

 執着であろうと愛情であろうと……

 相手の家庭を壊すのは、愛じゃない。

 自分で執着だと言い切るなら、壊さないと誓って欲しい!

 そして、それを守って欲しい。

 俺は……俺達は、そいつのことなど……どうでもいんだ。

 詩織ちゃんが傷つくのを見たくない!」

「そうだ。俺もこれ以上傷ついて泣く詩織ちゃんを見たくない!

 そいつとは離れていてくれ!」

「うん。分かったわ。」

「詩織……私が居ること……忘れないで……ね。」

「……うん。」


大きく息を吐いてから拓海君が言った。


「それで、もう一匹いたよね。

 失礼な奴が……。」

「居たな!」

「そいつとは、どうなったんだ?」

「どうもしないけど……。」

「ほんとかよ。会社を調べてきた奴だぜ。」

「私と……どうなりたい…とかじゃないのよね。」

「じゃ、なんなんだ?」

「会社を立ち上げたみたいでね。

 営業の一環だったみたいなのよ。」

「えっ?……。」

「営業の一環? 何、それっ! めっちゃ失礼じゃん。」

「うん。失礼よ。

 ……必死みたいで……父がね……会社経営するの大変だったから……

 なんとなく大変なんだろうなぁ~って思うのよね。」

「それは、それ!」

「ちょっと……疑問。」

「何が?」

「落とすって言ったんだろ? そいつ。」

「うん。言ってたね。」

「落とす=営業の一環?  それ違うんじゃないか?」

「でもね、その後で言ったのよ。

 『経理だったんだ…。残念!』ってね。」

「うん?」

「それでね………実は………皆にも会いたかったみたいでね。」

「うわぁ~~~~っ! 何、それっ?」

「ちょっと待ったぁ――っ!

 詩織ちゃん、まさかと思うけどな。

 連絡し合ってるのか?」

「なんか会社に電話が架かって来たの。

 それで、止めて欲しいって言ったら、連絡先を知りたいって……

 それで、会社の電話でこれ以上話したくなかったから、ね。」

「ちょい待ち! 教えたのか? そんな奴に。」

「仕方なかったんだけど……いけなかった?」

「おいおい……個人情報、もっと大切にしろよな。

 断りな! いいか! 今すぐにこの場で断るんだ。

 そして」

「ブロック!」

「ブロック!」

「ブロック!」

「凄い! 見事なハモり!」

「感心してる場合じゃないだろ!」

「詩織ちゃん、今から電話するように! いいね!」

「はい。」

「電話が終わったら、直ぐにブロック!

 ショートメッセージもブロック!」

「うん。分かった。」

「はい。今から電話架けること。

 場合によっては俺が出るからな。」

「………。」

「どした?」

「なんか緊張する。」

「皆いるから…大丈夫だよ。詩織、ガンバっ!」

「じゃあ、電話するね。」

「おうよ!」

「なんか……拓海君、翔太君……お兄ちゃんみたい。」

「お兄ちゃんだよ。」

「そうだぞ。兄貴だ。」

「うん。」


電話を架けると、彼・下村一輝が出た。

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