あれから三年と四日目(8)
「マスター……凄い……」
思った以上の威力にぶっちゃけ引いているとノアがそんな感嘆の声をあげた。
そうだね、凄いね、メリッサが。ちなみにマスターは今の攻撃魔法の反動で左肩外れちゃった。ノアとナギが居なかったらめちゃくちゃ喚き散らすレベルで痛い。
「さて、じゃあ治しちゃおうか」
屈んで右手に残った最後の二つ、回復魔法の術式が刻まれた指輪でナギとノアの傷を癒す。ほんとは外れた肩も治したかったけど、さすがに俺だって優先順位は弁える。このなかじゃどう考えたって俺が一番軽傷、というか俺だけ自爆。
それにしても相変わらずメリッサの回復魔法は凄い。あんなに血だらけだったナギはすでに傷一つない体にまで治っているし、ノアなんて腕が再生してしまった。俺が回復魔法を使っても切り傷すら治せないんですがどういうことなんでしょうね。
「……あ、れ……? 僕は……何を……」
「おー、大丈夫か?」
「マスター……? ここは……」
「ここは迷宮。紆余曲折あってほんとは来るべきじゃないナギがここに来ることになっちゃった、みたいな感じ。ごめんな。変なことに巻き込んで」
「いえ……その……えっと…………そうだ! あいつは!? あの化け物はどこに!?」
傷は治っても失った血までは戻らない。体を起こそうとするナギを支えると切羽つまった表情でナギがそう訴える。
「それならマスターが倒した」
「いや、厳密にはメリッサの魔法道具がね? ま、とりあえず心配しなくても大丈夫。もう、全部終わったから」
よっぽど怖い目にあったのだろう。悪いことをしてしまった。
今後のこと、色々と考えないと。
ノアのこととか、今回のことの原因とか、他にも上げ出せばきりがないくらいに色々と。
まぁ、それもひとまずは帰ってからの話だ。
もうメリッサの魔法道具は一つも残っていない。俺レベルの雑魚ともなるとゴブリン相手でも普通に死ねるので自衛手段のない今の状態で迷宮にあまり長居はしたくない。
ま、さすがにあのきしょい奴は死んだと思うし、そこらの迷宮生物ならノアとナギで十分対処できるだろうけどさ。
「ニンゲン……オイシイ……ニンゲン……タベル……ニンゲン……コロス!!」
……まじ?




