あれから三年と四日目(7)
いやー、焦った焦った。
ヤバイことになってるのは分かったけど、幼なじみは誰もギルドにいないし、帰ってくるのを待ってられる余裕なんかもちろんない。
頼る宛てが全くないではないにしろ、余計な借りを作るくらいなら俺が行った方がまだまし。
そんなこんなでメリッサに貰った魔法道具を持てるだけ持って急いで迷宮へと向かった。
魔法道具は大きく分けて二種類ある。
一つは迷宮で手に入る迷宮産のもの。
もう一つは魔導師が術式を刻み魔力を注ぎ込むことで作られる魔導師産のもの。
この二種類の違いは主に使用する魔力と使用できる回数にある。
迷宮産は魔法道具を使う者の魔力によって刻まれた魔法は発動し、魔法道具そのものが壊れない限りは永久に使うことができる。
対して魔導師産は魔法道具を作る際に魔力を注ぐため使用時には魔力を必要としない。その一方、迷宮産とは違いどれほど優れた魔導師が作った魔法道具であっても使えるのは一度、使用された魔法道具は魔力と術式を失い砕け散る。俺は魔法道具を作れないのでよく分からないけど、前にメリッサが魔法道具はコスパが最悪だとごねていた。そんなコスパ最悪のものたくさん作ってもらってごめんね?
ともあれ、今日に限っては可愛い後輩のためだから無駄遣いしても許してほしい。
迷宮まではメリッサ作の空間を移動する魔法の術式が刻まれたネックレスを使って跳躍。
そこからは魔力を感知する魔法の術式が刻まれたイヤリングでおおよそのあたりをつけて短距離を点と点を繋ぐように移動する魔法の術式が刻まれた腕輪で跳躍。
間一髪、ノアの元へとギリギリのタイミングで現れることができたらしい。防壁の魔法の術式が刻まれた指輪が二つ、何らかの攻撃を受けたらしく粉々に砕けて散った。
たぶん、ここまで来るのに使った魔法道具の値段で屋敷が一ダースは建つと思う。ちょっと頭が痛くなってきたなぁ……。
「ます、たぁ……?」
「はいはい。マスターですよーって、これはちょっと不味いな」
にしても酷い状況だ。
ノアは泣いてるし片腕ないし。
ナギにいたっては腹に穴でも空けられたのか血がドハドバ溢れ出ている。
あげく背後には二足歩行の……二足歩行の……なんだこれ?
え、なにこれ?最近の迷宮こんなんでるの?きっしょ!絶対二度と迷宮近寄らないようにしよっと。
「グヒ……ッ。オカワリ……イタダク!」
「……ふむ」
なんかきしょい奴に攻撃されたっぽい。
速すぎて全く見えなかったけど、指輪がまたぶっ壊れたから間違いない。
「とりあえずお前邪魔だな」
「――ギッ!?」
メリッサ作の攻撃魔法の術式が刻まれた指輪による一撃。
壁をぶち抜いてきしょい奴は視界の外へと消えていった。
さすがメリッサ。わけわからん奴がわけわからん勢いで吹っ飛んでった。絡まれたら自衛に使えって渡されたけどこんなの使ったら俺が加害者になっちゃう。なんなら死体が残らないから事件にならないまであるよこれ。




