あれから三年と二日目(2)
案の定、ろくでもない一日だった。
本当は着いてきてもらう予定のなかったノアが着いてくるだけでも予定から大きく外れてしまったのに、そのうえ気づいたらアリスが馬車に相乗りしていて死ぬかと思った。
「ねぇ、ノア? どうして私を呼ばなかったの? どういうつもりかなぁ?」
うっかりぶつかりかねないほどの近距離にまで迫ってそう問いかけるアリスの気迫にノアが地震かなって思うくらいの勢いでガタガタ震えていた。
放っておくとノアが人間恐怖症になりかねないので適当にアリスを宥めて二人を引き離す。
むーっと唇を尖らせてどうしておいていこうとしたのかと詰め寄るアリスに「だって、連れてったら絶対何か壊すでしょ?」と尋ねると「それとこれとは話が別でしょ? ごまかしたらダメ!」と怒られたのでやっぱりアリスには一生留守番しておいてもらおうと思う。全然別じゃねえんだよ。むしろそれが本題まであるんだよ。
そして、案の定やってくれた。
「わぁ、相変わらず大きいね。これがそのうち全部ルークのものになるなんて凄いなぁ……」
「ならないよ? 頼むから静かにしてて?」
中央ギルドについて早々これだ。
一体彼女には世界がどんな風に見えているのだろうか。
ロビーを抜けて、部屋に案内されても厄介ごとは終わらない。
「やぁ! よく来てくれたね、私の親友!」
そう言って、この組織のトップ、トイに背骨折れるんじゃないかってくらいに抱き締められた。
そして、そのままアリスにも抱きつこうとして背骨をへし折られてた。俺が土下座で謝ったのは言うまでもない。
というか、アリスも悪いけどいい加減この男も懲りろ。もうこれで何回めだと思ってんだ。首をはねられても死なないらしいけど、それにしたって痛覚はあるだろうに。
どうにもこの男は苦手だ。
幼なじみ達は揃ってこいつが嫌いらしいけど、俺のそれは少し違う。嫌いというよりは怖い。こいつの道化じみた行動の一つ一つに裏がありそうな気がして怖くて仕方ないのだ。
だから、ついでとばかりにノアへと抱きつこうと伸ばした手を反射的に払い落としてしまった。
それでもトイはへらへらと笑っていたし、
「……へぇ、随分とその半魔を大事にしてるんだね? 君のことが大好きな幼なじみ達は嫉妬しちゃうんじゃない?」
なんて軽口を叩いていたけれど。
やっぱりどうにも、こいつは苦手だ。




