あれから三年と二日目(1)
三年で変わったことと言えばもう一つ。
ギルドのマスターになったせいで新しい知り合いが増えた。
例えばナギ。
半ば強引に隠れ蓑として提供されたボロいギルド。そこにかつての幼なじみ達のように澄んだ目をして入ってきたのが彼だった。
なんでも冒険者になることが夢だったらしい。けど、この辺りにはギルドがなくて諦めかけていたのが俺達のおかげで夢が叶ったのだとか。
本来はどこのギルドでも対処できなかったような無茶な依頼を丸投げされるためだけのギルドだったけど、ナギが来たことでそれとは別に新米冒険者がこなせるような依頼も回してもらうことになった。
幼なじみ達曰く、センスはあるらしい。素直で真面目な良い奴なのは傍目に見ていても分かるから、ぜひ幼なじみ達から色々学んでほしい。でも、悪い影響は受けないで。お願いだから、依頼主を意識不明の重体にするとかはほんとやめて。
それからもう一人――
「……マスター」
「っ!? ……なんだ、ノアか。どうしたの?」
目が覚めて、今日の予定を考えてまたあいつに会わなきゃいけないのかとうんざりして一気に起きる気が失せた。
もちろん起きないわけにはいかないので、気晴らしに少し昨日書いた日記にナギ達のことを書き足していると不意に背後から声が。
突然のことにびくつきながらも慌てて後ろを振り向くとそこにはもう一人の新米がいた。もっとも、ナギとノアでは所属するギルドが違うけど。
「……今日は私が護衛します……!」
「ん……あー、うーん……」
彼女は少し境遇やおかれた環境が複雑だ。
彼女の人生や彼女自身について一から十まで話そうとするなら、それこそ彼女が生まれてから生きてきた今日までの十五年の時間を要する。
もちろんそんな時間はあるわけもないので、色んなものを割愛し分かりやすく彼女と彼女の今について述べるなら、
人間と魔族のハーフで、今はかつての闇ギルドが作った亜空間の中で保護しつつわりかし自由に生きてもらっている。色々と俺の仕事を手伝おうとしてくれる良い子。
と、まぁこんなところだろうか。
凄く優しくて思いやりのある良い子ではある。今もどこからか俺が出掛けなければならないという話を聞いてきたらしく、護衛を名乗り出てくれた。
気持ちは嬉しい。嬉しいけど、ノアは人間と魔族のハーフで少し人間とは容姿が違う点もある。メリッサが作った魔法道具で容姿を隠すことはできるけど、何しろ魔族はつい最近まで殺しあいをしていた種族だ。よく思わない奴が圧倒的多数でそこにいるだけで殺されかねない。もし万が一彼女の正体がバレたらと思うとあまり外には出したくない。
「気持ちはありがたいよ。でも、レインかメリッサに頼むから大丈夫」
これまでもそうしてきた。
あの二人なら基本的に大きな問題にはならない。
アリスは一回中央ギルドの幹部を半殺しにした前科があるのでお留守番だ。大人しくしててって言ったのになんで大人しくさせちゃうの?
極力傷つけない返答を心がける俺に困ったような顔をしてノアは再び口を開く。
「でも、今アリス姉しかいません」
「………………やっぱ、着いてきてもらっていい?」




