あれから三年と一日目(1)
マスターは、凄く変わった人だ。
一般的にギルドは人がいる場所に作った方が色んな面で良いとされている。にも関わらず、うちのマスターはこんな辺境の村近くの依頼なんて滅多に来なさそうな場所にギルドを建てた。
何度かどうしてこんな場所にギルドを建てたのか聞いてみたけれど、そのたびに適当なことを言ってはぐらかされてしまった。
まぁ、どうしてもマスターが理由を話したくないならそれはそれでいい。僕は、もう叶えられないと思っていた冒険者になる夢を叶えられただけで十分幸せだから。
それに凄くボロいし小さいギルドだけど、僕にとっては所属していることが誇りに思えるような凄いギルドなんだ。
ギルドの先輩達は本当に凄い人たちばっかりで、どの先輩も色んなことを新米の僕に教えてくれる優しい人たちだ。
メリッサさんは凄い魔法の使い手でまともに魔力の使い方も知らなかった僕にたくさんの魔法を教えてくれた。
レインさんは身のこなしが凄く軽い人で、ただ力任せに動くだけだった僕に体の使い方を教えてくれた。
アリスさんは何でもできてしまう凄い人で、僕が素振りや魔法の練習をしていると色んな参考になるアドバイスをくれる。
実はもう一人、まだ僕のあったことのない先輩がいるらしい。きっと凄い人だと思う。マスターが「不用意に近づいたら危ないからダメだぞ?」って言ってたからもしかしたら気難しい人なのかもしれない。
もちろん、マスターだって凄い人だ。
何かを教えてもらったことはないし、マスター本人は「いや、俺は弱いから。ナギに教えられることなんて何にもないよ」なんて言っていたけれど僕には分かる。
だって、あの凄い先輩達が言っていたのだ。
「ルーク? ……ま、悪くないんじゃない?」
「ルークには助けてもらってばっかだな、俺は」
「ルークはね、凄く凄いんだよ? だって、凄いもん」
そんなマスターが凄くないわけがない!!!
「また本部から呼び出されてる……。あいつら、今度は何やったの……? もう無理だぁ……。死ぬんだぁ……」
青い顔で手紙を読みながら震えているその姿からは想像もつかないけれど、絶対たぶんきっと凄いのだと思う。
「んあ、おはよ、ナギ。今日も早いね」
「おはようございます、マスター。その……大丈夫ですか?」
「ん? あー、大丈夫大丈夫。何とかするから。それより依頼なんだけどさ、これとかどう?」
マスターの勧めた依頼は、今の僕の力量にはピッタリの依頼だった。
やっぱりマスターは凄い。
先輩達の言う通りだ。




