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我の主は日記好き16
我の主は弱い。
これまでの主の中でも間違いなく最弱だ。
では、どうして我はそんな主を主に選んだのか。
主が料理をするから。主の料理の腕が我の想定を上回っていたから。主にしてやってもいいと思えるくらいには我を丁寧に扱って「いた」から。
……そう、思っていた。
本当に、そうだろうか。
主の眠るベッド。そこに腰かけ寝顔を覗く。
いつも通りの、腑抜けた顔がそこにはあった。人畜無害そうな、危害を加えるなんて到底できなさそうな、むしろ危害を加えられそうなそんな顔が。
『主、お前は……』
あの瞬間、一方的な蹂躙とも言える様な戦闘の最中、幼馴染共の脅威にいち早く気付き、一番弱い奴を狙おうとしたロベリアのマスター。
死に気付くことすらもなく死んでいった。
何のためらいも躊躇もなく、主は奴を我で殺した。
『…………』
我は魔道具。
我は包丁。
その本質は料理をすることにあり、それ以外はできない。
それが我の在り方だ。




