我の主は日記好き9
我さ、実は凄い魔法道具なんだよね。
昔は凄い敬われたり、我を巡って戦争が起こることなんて日常茶飯事だったりした凄い魔法道具なんだよね。
我を使うことを許される料理人っていうのはさ、それはもう凄い名誉なことで、歴史に名を残すような偉人ばっかりなわけよ。
救世の宝具とか傾国の宝具とか呼ばれちゃう凄い魔法道具なわけ。欲しい奴はそれこそ国一つ差し出してでも欲しがるくらい貴重で価値のある魔法道具なわけ。
だから、我で壁彫るのやめろや。
いい加減にしろよ、このバカ主。
ビックリしすぎて怒りも湧かなかったわ。
何すんの?どういう神経してたらこんなことできるの?
包丁って料理人にとっては魂みたいなものじゃん?自分の命より大事なものじゃん?
それで壁彫るとかイカれてんの?
我のことなんだと思ってるの?
「やっぱ凄いな……。傷一つついてない」
とんでもない蛮行に出た主は、天井に取り付けられた心許ない灯りにかざして我を隅々まで観察するとそう言った。
そりゃそうだ。我、超凄い魔法道具だし。
石造りの壁に叩きつけられたくらいで壊れる柔な創りはしてないし、仮に破損したとしてもすぐに直る。
けど、そういうことじゃないよね?
おい主、こっち向け。興味失うのやめろ。我、魔法道具だぞ。我よりそんな壁に彫った日記に興味もつのやめろ。壁に彫った日記読んで穏やかな笑み浮かべるのやめろ。なんなら普段より落ち着いた表情するのやめろ。お前状況分かってんのか。情緒どうなってんだ。
「……日記が書けるなら、牢獄もスイートルームみたいなもんだよなぁ……」
妥協しすぎだろ。
なんだこいつ。




