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まだ魔王討伐に行くのは優秀な幼なじみ達だけだと思っているごく普通の少年の日記【連載】  作者: 日暮キルハ
我の主は日記好き

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我の主は日記好き1

 人間というのはおかしな生き物だ。

 我を巡って殺しあったかと思えば、我を恐れてアホみたいに厳重な封印を施す。

 我を「救世の宝具」と呼んで崇めたかと思えば、我を「傾国の宝具」と呼んで忌み嫌う。

 本当に、愚かで愉快で理解できない愛すべき生き物だ。


 我はそこに在った時から何も変わってなどいないというのに。


 いつから在ったのかはもう覚えていない。

 何十、何百という国が我を巡って争い、何千、何万という料理人が我を使ってきた。もうその名前も顔もほとんど覚えてはいない。


 記憶に残るような主というのは、どいつもこいつも一癖も二癖もあるような人間のなかでも変わり者と呼ばれる者ばかりだった。


 例えば、もう滅んだ国に仕えていた料理人。

 奴は料理バカと呼ぶに相応しい。

 奴は料理を愛していた。

 人が人を愛するように、奴は料理を愛していた。

 そんな変わり者だったから我は奴を気に入ったし、奴も時間にすら抗い料理をすることを許される我の存在を料理の次に愛していた。


 結局、我を多用しすぎて死んだがとても面白い奴だった。


 例えば、世間を騒がせたイカれた殺人鬼。

 奴は料理人ではなかった。たまたま奴が殺した商人が当時売りに出されていた我を見つけたのが出会いだった。

 奴には面白いことを教えてもらった。

 本来、我は「料理」をするための道具に過ぎない。

 ゆえに、我の魔法を発動させる条件は我を用いて調理を開始することにある。

 そして、停止した世界のなかでは調理以外の一切の行動は禁止される。我は調理道具なのだから当然だ。

 では、調理とは。

 これは「食事」をするための「準備」を指す。

 では、誰の価値基準でこれは定義されるのか。

 我はずっと我の価値基準でその行動が「調理」だと定義しているものとばかり思っていた。

 しかし、違った。

 我の認めた主の価値基準。

 それこそが「調理」を定義していた。


 奴が言うには、人は個体によるアタリハズレが他の食肉よりも大きいらしい。


 こうして振り返ってみるとやはり人間は面白い奴が多いように思う。

 まぁ、それはそれとして


「はぁ~、このメンヘラ包丁のせいで軽く料理すんのも一苦労だわ。こんなの欲しがる奴どうかしてるだろ……」


 我をここまで邪険に扱う奴は流石の我も初めてだ。

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