四十日目
起きたら迷宮だった。
……まぁ、生きてたらこういうこともわりとよくあるのかもしれないしそれはもういい。問題は、ここが明らかに前に連れてこられた迷宮と造りが違うことだ。あと、凡才な俺でも分かるくらい、明らかに空気が重い。俺の中の第六感様が今すぐ逃げろと叫んでいらっしゃる。
もちろん、逃げるなんてできない。まず帰り道が分からないし、拳の一振りで壁を砕くような化け物が闊歩する場所を俺一人で彷徨くなんて自殺行為もいいところ。そんなわけで大人しく諦めて、これといってやることもないのでとりあえずこうして日記を書くことにした。
……ふむ、しかし、あれだ。前に迷宮に連れてこられた頃とは違って多少は俺も知識がついたから分かるけど、この迷宮の迷宮生物はどうやらどいつもこいつも前に連れてこられた迷宮とは比べるまでもないくらいに強い奴ばかりのようだ。
前の迷宮は騎士見習いや初心者冒険者向けということもあって、迷宮生物の種類も迷宮で少し強化されたゴブリンやスライムなんかの比較的弱い部類(俺が勝てるとは言ってない)の奴ばかりだった。けど、今回の迷宮はそのゴブリンやスライムですらホブゴブリンやポイズンスライムのような進化した種になっている。こうなってくるともはや森の魔物より強いとかそういう次元じゃなくなってくる。それだけでも厄介なのに、さっきから力任せに壁をぶち抜きまくっている牛と人を混ぜたような異形の迷宮生物、ミノタウロスまでいる始末。俺だったら秒で死ねる。
唯一の救いはどいつもこいつも前の迷宮に比べれば、確実に「味の良い」奴らばかりだということ。特にミノタウロスの肉はどの部位も極上らしい。
ステーキ、シチュー、ビフカツ。
メインはミノタウロスの肉で何か作ることにして、ポイズンスライムもきちんと毒の処理を済ませれば、プルプルでかなり美味しいらしいからそれで何か作るのもありかもしれない。
ホブゴブリン?あいつはダメだ。どう転んでもただのゴブリンだから諦めろ。
だから、アリス。今すぐ俺にすり寄ってくるのをやめてそのゴブリン捨ててこい。「ステーキ……」じゃねえんだよ。無理だって言ってんだろ。




