三十八日目
何から書けばいいか……。
まずは、そう、今日は二日ぶりに走った。たかが二日休んだだけと侮っていたけれど、想像以上に体力が落ちていてしんどかった。
それでも第三王子に励まされながらなんとか完走して、ふと後ろから視線を感じて振り向くとどこかで見た白髪の少女が木の陰からこちらをじっと見つめて……いや、睨みつけていた。
結論からいえば、彼女は第八王女。第三王子の実の妹だった。
なんでも、最近第三王子が大怪我をすることが前以上に増えて、その背景に勇者パーティーが関わっていると知って俺を監視していたらしい。兄想いの妹が兄を心配しているということだろう。ところで前からこの規模の大怪我してたって第三王子何してんの?
ともあれ、第八王女は酷く俺のことを警戒しているようだった。
別に子供好きだとか、そういうことは無いと思うけれど、それでも見目麗しい将来有望な美少女にあからさまに敵意を向けられるというのは些か寂しいものがある。これは何とか名誉を挽回しないとと思った。
まずは、第一印象。にこやかに爽やかに挨拶をしてみた。
「はじめまして」
「死ねばいいのに」
泣きそうだった。というか第一印象はすでに最悪だった。主にあいつらのせいで。俺の関与しない所で俺の第一印象決まるのおかしくない?
へこんでいたって仕方ない。次は何か好きなものはないかと聞いてみた。
「何か好きなものはありませんか?」
「お兄様が好き。だから、お兄様を独り占めするお前は嫌い」
ちょうど首を吊るのに良さそうな木を探してしまった。
散々足る言われ様に思うところがあったのか、第三王子がこそっと耳打ちをしてくれた。
「レナはな、甘い物が好きだぞ!」
それを活かさない手はない。
二人に着いてきてもらい、厨房でクッキーを焼く。
我先にと両手で口に放り込む第三王子をよそに、未だに警戒を見せる第八王女に出来る限り穏やかな笑みを浮かべて一枚どうぞと勧めてみた。
結果的に、甘い物で関心を引こう作戦は無事成功した。俺の人格云々はともかく「甘い物に罪はないものね」なんて言いながら、余ったクッキーをニコニコ笑顔を浮かべながら持って帰る第八王女はめちゃくちゃ微笑ましかった。
ただ、約束の時間を一時間遅刻して現れた俺達に「……あ、やっと来てくれた。えへへ、捨てられたのかと思っちゃいました。もう、遅刻はダメですよ……?」と焦点の合わない目で笑いながら血涙流していたアルマさんには本当に申し訳ないことしたと思う。




