二十六日目
ランニングをしていたら、第三王子に捕まった。
当然、生きた心地はしなかった。
不敬罪の三文字が頭のなかで踊った。
まだ、この国から逃げるための準備は全く進んでいないのに。
そもそも、逃げ出したとしても、どこにも逃げ場所なんてないのに。
生きるための逃亡プランはまだ思い付いてもいないのに。
終わったと思った。
けれど、どうやら第三王子はその手のことで俺に声をかけた訳ではないらしかった。
なんでも、俺が厨房に来るまでに何をしているのかが気になって、調べさせてこの朝の日課を突き止めたらしい。あと、今日から一緒に走るぞと事後的に告げられた。そこに俺の意思は介在しないらしい。
正直、どうするべきかよくわからない。
これまでの俺の態度を気にしている様子もないし、むしろ「レオン様」なんて呼ぼうものなら凄く嫌そうな顔をして訂正を要求される始末。そういう性格なのか、それとも何か思惑があるのか。仮にそういう性格で堅苦しいのが嫌なのだとしても、それにのってしまっていいものか。
色々と思うところはある。
ユーリ達に散々な目に遭わされたことを怒っている様子もない。むしろ、また戦ってみたいと無駄に意欲的だった。まぁ、だからと言ってユーリ達のやったことがチャラになるわけはないし、不敬罪に違いはないのだけど。
俺の乏しい人を見る目に従うなら、きっと第三王子はこういう性格なのだろう。
でも、それを知ったところでなんの解決にもなりはしない。
問題を起こさず村に帰りたいだけなのに、どうしてこうも悩まなくてはいけなくなるのだろうか。
……とりあえず、最悪の状況になった時に逃げる算段くらいは可能な限り早く整えておかないと。




