二十四日目
死ぬ一歩手前まで走らされた翌日は、それはもう酷い筋肉痛に襲われた。
あれから何だかんだで毎日早朝から走る日が続いた結果、多少は慣れて体力がついたらしい。
おかげで今こうやって日記を書いていてもペンを握る手は震えていないし意識もハッキリしている。
目的をようやく思い出して、決意を新たにしたけれど、別にだからといって何か村へ帰るための糸口は見つかったりしない。
今日もここ数日と特に何か違うことなんてない普通の一日だった。
午後に窓から外を覗き込んだらアリスが新しい師匠と思わしき人を完全に完封してぼこぼこにしていたのを除けば本当に何もない一日だった。
……あー、いや、そうでもないか。
何か劇的な出来事というようなことでもないけれど、今日は面白い奴と知り合った。
早朝のランニングは始めた頃より少しずつ早く終わるようになっていた。これが体力がついた結果によるものか、単純に慣れて体が効率の良い体の動かし方を覚え始めたのかは分からないけれど、ともかく少しは早く終わるようになった。
時間ができれば、これまでは雑に済ませていた昼食も多少はきちんと作る気になるというもの。そんなわけで勝手に厨房と食材を借りていざ料理、という時にそいつは現れた。
何というか、一言で言うならそいつは変な奴だった。
いきなり厨房に入ってきたかと思ったら「む!? 見習いか!? そうか! 見習いだな!! なに、気にするな!! 勝手にここを使っていることは料理長には黙っておいてやる!! ガッハッハ!!」とか言って、勝手に俺が用意しておいた果物を食うような変な奴。
なんか誤解してるっぽいからこっちが説明してんのに全然人の話聞かないし、やたら距離詰めてくるし、無駄に声でかいし。
で、そんな変な奴を尻目に俺は昼飯を作ってたわけなんだけど、当然とばかりにそいつは俺の飯に興味を示して、言葉にせずとも分かるくらい食いたそうにしてたので「お前も食うか?」って聞いたら「いいのか!? お前、さては良い奴だな!! うまい!! うまいぞ!!! うますぎる!!! おかわり!!!」とか言って先に用意してた俺の分の飯を食った挙げ句おかわりを要求された。一口食う?って聞いたらアリスに全部持ってかれたのを思い出した。
結局、何だかんだでそのアホのおかわりに付き合わされてアルマさんとの約束の時間までガッツリ料理する羽目になってしまった。
まぁ、でも正直反応が良いのもあって結構楽しかった。こんな凡人の料理であんだけ絶賛してもらえたら悪い気はしないし。
帰る時に「明日も来るぞ!」って言ってたのは素直に二度と来んなって感じだけど。
あと、あれな。
なんか自分のことを王子だとか言い張ってたけど、王子がこんなとこ単独で彷徨いてるわけねぇし、妄言も大概にした方がいい。
もし、明日また来たらその時は「お前、自分を王子だと勘違いしてる精神異常者だろ」って教えてやろう。




