十八日目
今日から、いよいよ本格的に指導が始まった。
修行は、早朝のランニングから始まる。
何だかんだでこれが一番きついかもしれない。というか起きるのがきつい。マジきつい。太陽さんがまだ昇りきってもないのに起きるとかもう意味分かんないでしょ。
と、不満が全くないわけではないけれど、俺の意思に沿って指導メニューを立てて貰った以上、逆らうつもりはない。
やることは多い。朝が早くなるのは仕方がないと諦める他あるまい。
ランニングを終えたら次はアルマさんが組んだ基礎トレーニングをこなす。
アルマさん曰く、これをやっておけば逃げるために必要になる基礎能力は身に付くとか。
ある程度身に付けば、今度はもっと本格的な逃げるための技術を学ぶことになるらしい。
最初に聞かされたときも思ったけど、あの人ほんとに料理人?明らかに料理人が料理人としての指導する内容じゃないよ。いやまぁ、それを気にしだしたら、どこの料理人が自分よりでかい魔物を涼しい顔して片手で絶命させるんだよって話だけど。
そこまで終わった頃には、太陽さんも真上とまではいかずともかなり高いところまで昇っている。
正午からはアルマさんも交えての指導となるので、それまでの空いた時間にさくっと昼飯を済ませて待ち合わせ場所へ。
欠伸をしながら「さっき起きたところなんです……。もうちょっと寝てたかったですね」とか抜かす師匠に若干イラっとしつつ席に着いて本を開く。
午前が肉体の修行だったとしたら、午後は頭脳の修行。
もうちょっと具体的に言うなら、午後からはこの世界のありとあらゆる生物、つまりは食材についてのお勉強。
特性、構造、弱点、成分、毒の有無、管理の仕方、その他諸々。
必要な情報を片っ端から頭に詰め込んでいく。これから先、村や町で見知ったもの以外を口にしなければならないタイミングはきっとある。その時に今日身につけた知識が生死を分けるから。
戦闘面において、俺があいつらにまざってできることは何もない。最低限一人でその場から逃げられる程度の体作りはしているけれど、そこから先は目指すだけ時間の無駄と切り捨てた。それなら、あいつらに足りない部分を少しでも埋めるための部品になりたかった。
ひとまず今日の分の勉強を終えて、窓を覗けば外はすっかり日が暮れていた。
たぶん、明日からもこんな感じで毎日が過ぎていく。
明日も早い。そろそろ寝なければ。
……ところで、今日まともに包丁握ってないんですけど料理人の修行ってなんですか。




