十六日目
今日は森に連れていかれた。
昨日、生意気なことを言ったから、埋められちゃうのかなってちょっと怖かったけど、全然そんなことはなかった。
昨日の俺の言葉への答えを、言葉ではなく事実で示そうとしてくれていただけだった。
料理人に体力はいらない。
魔獣をねじ伏せることでアルマさんはそれの答えとした。
「たしかに、料理を作るうえでこの手の体力は必ずしも必要ではないかもしれません」
「ですが、貴方は勇者パーティの料理人です」
「いつもいつも、恵まれた環境で調理を行える保証なんてどこにもありません」
「それどころか、命の危険に晒されることも一度や二度ではないでしょう」
「戦え、とは言いません」
「もちろん戦えるに越したことはありませんが、やはりその優先順位は限りなく低いですから」
「でも、最低限、貴方一人でもその場から逃げられるくらいにはなりましょう」
「仲間の負担にならない料理人でありましょう」
「そのために、走れる足と体力は料理人には必須の能力です」
「貴方は今、目の前の魔獣を相手に逃げることすらできませんでした」
「遠くない未来、きっとこれと同じことが起こるでしょう」
「貴方の努力不足で大切な幼なじみを殺したいですか?」
残念ながら、それを言われて「なるほど! じゃあ死ぬ一歩手前まで頑張らないと!」となるほど純粋でもバカでもないけれど、それでも思うところはあった。
あいつらは強い。俺なんかとは違って、優秀で才能に溢れている。それは村のなかだけの狭い世界じゃなくて、村をでた後だって変わらない。あいつらが負けるところの想像なんて全くつかない。
けど、アルマさんに言われて、ほんの一瞬だけ頭を過った。俺を庇って殺されるあいつらと、この期に及んで何もできず立ち尽くす俺の姿が。
それは、嫌だ。
うっかり死ぬ一歩手前の修行とかいうとんでもない選択肢を受け入れてしまいそうになるくらいには嫌だ。
辛いのも、痛いのも、苦しいのも嫌だ。
けど、それでも、明確にイメージ出来てしまった。
あいつら、何だかんだで俺のこと好きすぎるからね、うん。
好きだから、勝手に魔王討伐の旅に連れていくし、勝手に迷宮に連れていくし、休みの日に一日たりとも休ませてくれないし。
……あれ、俺もしかしてやっぱり嫌われてる?




