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まだ魔王討伐に行くのは優秀な幼なじみ達だけだと思っているごく普通の少年の日記【連載】  作者: 日暮キルハ
まだ魔王討伐に行くのは優秀な幼なじみ達だけだと思っているごく普通の少年の日記

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十五日目

「死ぬ一歩手前まで頑張りましょう!」



 待ち合わせ場所に待ち合わせ時間の五分前に到着すると、すでに待っていたアルマさんは笑顔で俺にそう言った。

 そして、その言葉に嘘偽りは一切なかった。

 その証拠に今、ペンを握る俺の手はガタガタ震えてちょっと文字が書き辛い。


 動きやすい格好で来てくださいと言われた時からなんだかおかしいとは思っていたけれど、なぜかめちゃくちゃ走らされた。

 どう考えたっておかしいからどういうことか聞こうとしたら「え……あ、そうですよね。こんな師匠になったばかりの変な女の言葉になんて従う気にならないですよね。そこの川で頭冷やしてきます。……全身冷たくなるまで」とか言い出したので拒否権なかった。


 元々、運動慣れしているわけでもないので、割りと早い段階でバテてもう無理だと弱音を吐くと心底不思議そうな表情で「え……でも、まだ喋れてるじゃないですか?」と返された。あれで「あ、この人ヤベー人だ」って理解した。


 「まだ足が動いているから大丈夫です」「まだ手は動くから大丈夫です」「まだ血を吐く元気があるから大丈夫です」「まだ意識があるから大丈夫です」「今、意識を失って寝てましたよね? なら、まだ大丈夫です」「三途の川が見えた? まだ死ぬ手前にはもう少し遠いのでもう少し頑張ってみましょう! 川に体が浸かる位まではいけますよ!」


 そんな調子でかれこれ十時間ほど走らされて、気づいた頃にはなぜか椅子に座っていた。覚えている限りでは、体中の穴から血が吹き出して、見知らぬ川に腰くらいまで浸かっていたはずなのだけど。

 しかし、まぁ、十時間も走らされたらさすがに気づくことの一つや二つはある。どう考えたって料理にこの手の体力いらない。あと、運動のしすぎは体に悪い。

 なにやら何冊も本を抱えて部屋に入ってきたアルマさんにそれを告げると真顔で「でも……いらないものなんてないですよ?」と返されて思わず黙ってしまった。そういう話をしてるんじゃないんだよね。


 顔に心境が出ていたのか、ドサリと机に本を置いてアルマさんは今日はここまでにすると言った。それから机の本を読んでおくようにと。

 さっき一通り目を通してみたけれど、どれも獣や植物の生態についてのものだった。何がやりたいのかさっぱり分からん。


 ともあれ、明日からはせめて死ぬ二歩手前位のランニングで勘弁して欲しい。

 

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