十四日目
なんか、俺の修行だったらしい……。
朝、呻き声が聞こえて目を覚ますと、ベッドのうえで長い黒髪の女性と思わしき何かがさめざめと泣いていた。あと、「どうせ……どうせ私なんか……」って小声で呻いていた。
超怖かった。チビるかと思った。思わず「ひぇっ」とか言っちゃったし。
で、その人が俺の師匠、名前はアルマというらしい。
「どうして昨日はきてくれなかったんですか?」「私なんかに教えて欲しくないってことですか?」「私なんかじゃ師匠に相応しくないってことですか?」「私なんかを師匠にするなんて嫌だって意思表示ですか?」「いえ、いいんです。分かります。こんな彼氏いない歴=年齢の三十路女に何も教わりたくないですよね?」「こんなごみ屑に教わることなんて何もないですもんね」「えへへ、私は社会のごみ。……ちょっと首吊って来ます」と勝手に喋って勝手に自己完結して勝手に死のうとし出す色々ヤバめな師匠だ。
とりあえず、俺の部屋で首吊りとかされたら事故物件になっちゃうのでやめてもらってお互いの話の食い違いについて話し合ってなんとか丸く収まった。
昨日見つけたスケジュールは俺の物だったらしい。で、それを知らずに俺はアルマさんを丸一日待ち合わせ場所に待ちぼうけさせてしまったのだとか。
さすがにそれを言われて何も思わないほど人の心を捨てちゃいない。平謝りしていると「いえいえ、いいんですよ。そういうことなら仕方ありませんね」とあっさり許してくれた。
けど、そのあとに「こんな弟子に修行があると気づいてすら貰えない師匠もどきは一生待ち合わせ場所だ待たされていればいいんです。へへっ」と続けるのを聞いて二度とこの人との待ち合わせには遅刻しないと心に決めた。
新しくスケジュールを貰い、口頭でこれからの予定の説明を受けた。
本格的な指導は明日から始まるらしい。
ちょうどお昼の時間帯だったので、ベテルツュエンギヌドンと昨日買った七色に味が変わるらしい面白果物でさくっと昼飯を作ると、なにやら考え込むような様子でアルマさんはそれを食べた後、「ご馳走様でした。美味しかったですよ」と言って帰ってしまった。
自分で食べてみても普通に美味しいと思うけど、何か気に入らないとこでもあったのだろうか。
……いや、今はそれより明日からの修行に遅刻しないようにしないと。




