表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

タイトル未定2026/04/18 00:40

41 ○大学・教室(昼)

健司は自分の席でノートを並べている。

教室には、学生たちのおしゃべりが低く響いている。

突然、その空気を裂くような鋭い声。

みなみ「ちょっと!」

健司が振り向く。

みなみが目の前に立っている。表情は張りつめ、まっすぐに彼をにらんでいる。

健司「みなみ…?」

みなみ「心に、何言ったの?」

健司はまばたきをし、戸惑う。

健司「え?」

みなみ「昨日、

一日中泣いてたんだよ。

なんであんな大声出したの?」

健司「大声なんて出してないって。」

みなみ「みんな見てたよ、健司。」

健司の声が少し上がる。

いらだちがにじむ。

健司「そんなことない。

それに…なんでお前がそんなに怒ってんだよ?」

みなみ「あの子は、私の友達だから。」

その言葉は刃のように、空気を切り裂く。

健司の体がこわばる。

手がぴくりと動く──ほとんど無意識に。

教室が、ゆっくりと遠のいていく。

周りの声がぼやけ、音が消える。

健司の指が、耳元の小さな装置に触れる。

カチッ。

暗転。

42 ○アパート・リビング(昼・シミュレーション/ビジョン)

健司はソファにだらしなく寝そべり、テレビをぼんやり見ている。

手にはリモコン。興味なさそうに、チャンネルをパチパチと切り替えている。

部屋の奥では、みなみが畳の上に掃除機をかけている。

健司「やめてくれよ。

音が聞こえない。」

みなみはビクッと固まる。

みなみ「あ…ごめんなさい。」

彼女は掃除機を止め、部屋の端にそっと置く。

健司は満足そうにクッションに沈み込み、再びテレビに視線を戻す。

みなみがそっと近づき、小さなお盆を持ってくる。

湯飲みを差し出す。

みなみ「これ…あなたの好きなお茶、淹れたの。」

健司は目を細め、疑わしげに見る。

健司「どうしたんだよ。

具合でも悪いのか?」

みなみ「え…? なんで?」

彼女はどこか不安げで、指先がかすかに震えている。

みなみ「気に入らなかった…?

なら、別の淹れる。

すぐ作るから。待ってて。」

みなみは慌てて部屋を出ていく。

健司はため息をつき、小さくつぶやく。

健司「やっと静かになった…。」

しかし、すぐにみなみが戻ってくる。

さっきとは別のお盆。今度はお茶と一緒に、小さな菓子が添えられている。

大学にいるときのみなみとは、まるで別人だ。

控えめで、不安定で、壊れそうなほど繊細。

健司は一口お茶を飲み、菓子をひとつ食べる。

湯飲みをテーブルに戻す。

健司「美味しいよ。ありがとう。」

みなみ「いろんなレシピ、調べたの。

言ってくれれば、ほかに新しいのも作れるわよ。」

健司「ああ…うん。いいよ。」

それでもみなみは、健司をじっと見つめ続ける。

まばたきさえ忘れたような視線。

健司は落ち着かなくなってくる。

健司「な、なんだよ…そんなに見るなって。

他にやることあるだろ?

暇なのかよ。」

みなみ「あなたを見ていたいの。」

健司は眉をひそめる。

健司「…は?」

彼は立ち上がる。いら立ちを隠せない。

みなみ「どこ行くの?」

健司「散歩。外、出る。」

みなみ「私も行く。」

健司「来なくていいよ。

自分の好きなこと、見つけろよ。」

みなみ「もう見つけたの。

あなたの好きなものが、私の好きなもの。」

健司はその場に固まる。

健司「それ…どういう意味だよ。」

みなみ「あなたと一緒にいられるだけでいいの。

(目を輝かせて微笑む)

幸せなの。ずっとこうしていたい。」

みなみはまっすぐに、健司を見つめ続ける。

その献身は、檻のように重くのしかかってくる。

健司の表情が、ゆっくりと恐怖に変わっていく。

健司「もうたくさんだ。

お前も…お前の友達も…

俺の人生で一番最悪なことをしてくれた。」

彼の手が耳へ上がる。

イヤーピースのボタンを押す。

カチッ。

暗転。

43 ○大学・教室(連続・現在)

教室には静かなざわめきが漂っている。

健司とみなみが、教室の真ん中で向かい合って立っている。

健司「お前も…お前の友達も…

俺の人生で一番最悪なことをしてくれた。」

重い沈黙が落ちる。

周囲の学生たちが一斉に二人を見る。

空気が凍りつく。

誰も動かない。

すぐに、ひそひそ声が広がり始める──

好奇とざわめきと、値踏みするような視線。

みなみの唇が震える。

目に涙がにじみ、視界がにわかに曇る。

そして突然、感情が爆発する──

怒りと悲しみが入り混じった声。

みなみ(涙越しに)「ひどい…!」

みなみはくるりと背を向け、駆け出していく。

泣き声が廊下に響きながら遠ざかる。

周囲の視線は、まだ健司に向けられたままだ。

健司は教室の反対側を見る。

遼と目が合う。

二人は無言のまま、すべてを察するように視線を交わす。

健司は息を吐き、首を小さく振り、静かに席へ戻る。

周囲のひそひそ話は続いているが、

健司はただノートを見つめ、

すべてが聞こえないふりをして、心を閉ざしていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ