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タイトル未定2026/04/18 00:27

21 ○電子パーツ店(昼)

棚には技術部品やガジェット、小さな部品がびっしりと並んでいる。

店内には静かな話し声と、頭上の照明がかすかに唸る音が漂っている。

健司と遼はゆっくり通路を歩きながら、棚を見渡している。

遼「よし、予算は限られてるけどアイデアはデカい。

無駄にはできないぞ。」

健司「そもそも、何を作るかはもう決まってるのか?」

二人は、スマートグラスやBluetoothイヤホン、

ウェアラブル端末が並ぶ棚の前で立ち止まる。

遼「まあ…なんとなく、な。

今日はそれを決める日だ。

メガネ型か? ヘッドセットか? それとも、もっとスマートなやつか?」

健司「メガネはさすがに露骨すぎる。

目立ちすぎるし、すぐバレる。」

遼「たしかにな。もっと目立たず、自然じゃないと。」

健司は小さなワイヤレスイヤホンを手に取り、じっと見つめる。

健司「こういうのはどう?

耳に隠れるし。」

遼「イヤホンか…センサー接続、音声入力、データ受信…

うん、いけるな。」

健司「何も意識せずにつけていられるものがいい。」

遼「インターフェースも超シンプルにすれば、

装置が動いてることすら気づかれない。」

二人はマイコンやワイヤリングキットの棚へ移動する。

遼「マイコン、モーションセンサー、

ニューロフィードバック用のパーツ…

買えるものは全部いこうか。」

健司「まずは小さく。ちゃんと動くものを作って、

そのあとで洗練させればいい。」

遼「そう。

ステップ1…動かす。

ステップ2…美しくする。」

二人は、わくわくした様子で小さなカゴに部品を入れ始める。

健司「『ザ・ロング・マン』──バージョン0.1。」

遼「よし、実現させよう。」

22 ○内村家・遼の部屋(昼)

窓から柔らかな日差しが差し込み、部屋は静かだ。

電子部品や本、メモが散らばり、雑然とした空間になっている。

健司は椅子に静かに座り、プリントアウトされた資料をめくっている。

遼は薄い本を手に、小さな部屋の中を行ったり来たりしている。

ふと立ち止まり、一行を読んでから、本をそっと机の上に置く。

そしてコンピューターの前に移動し、しばらく画面を見つめ、考え込む。

やがてタイピングを始める。

その後また立ち上がり、買い物袋を手に取る。

中身を一つずつ机の上に置いていく──

基板、センサー、小さな工具。

遼は落ち着いた集中力で、それらを丁寧に並べていく。

23 ○内村家・遼の部屋(夕方)

遼は床に胡坐をかいて座っている。

部品やワイヤーが、用途ごとに整然と並べられている。

健司は椅子の上でうとうと居眠りしている。

頭が少し後ろに傾き、口がほんの少し開いている。

部屋には、コンピューターの静かな駆動音だけが響いている。

24 ○内村家・遼の部屋(夜)

ドアがきしむ音を立てながら、ゆっくり開く。

遼が静かに入ってくる。手にはペットボトル飲料を2本と、小さなスナックの袋。

遼はそっとドアを閉める。

その音で健司が目を覚ます。

まばたきをし、驚いたように体を起こすと、膝の上の資料がふわりと床に落ちる。

健司「ん…どこ行ってたんだよ?」

遼は飲み物を1本健司に渡し、自分も床に座り込む。

遼「ちょっと買い出し。

お前、しばらく熟睡してたぞ。」

健司「今、何時?」

遼「ほぼ真夜中。」

遼は数本のワイヤーと小さなチップを取り出し、健司に手渡す。

遼「これ、仕分け手伝って。」

健司は眠そうに笑い、うなずいて床に降りる。

遼「もうすぐだ。あと少し。」

健司「お前、修行僧みたいな忍耐力だな。」

遼「いや…ただの意地だよ。」

二人は小さく笑い合い、また黙々と作業に戻っていく。

25 ○内村家(夜)

頭上の空には星が散らばり、澄んだ夜空が広がっている。

通りは月明かりに照らされ、静まり返っている。

26 ○内村家(夜明け)

地平線の向こうから、最初の光が差し始める。

世界は静かに息をひそめ、新しい一日が始まろうとしている。

27 ○内村家・遼の部屋(朝)

柔らかな朝の光がカーテン越しに差し込んでいる。

部屋は静かだ。

健司と遼は畳の上で向かい合って座っている。

二人の間には、印刷されたグラフ、手書きのメモ、小さな電子パーツが丁寧に並べられて

いる。

穏やかで、集中した雰囲気が流れている。

健司「で…これ、どう動くんだ?」

遼は手描きの図や式で埋まったノートをめくる。

遼「脳の“初期反応”を研究してみた。

人は、魅力的だと感じる相手を目にした瞬間、

体内でホルモンが一気に放出される。

その瞬間は、性格や生活習慣なんてものは―

すべて無視される。

これは本能だ。 」

健司「まあ…確かに納得だな。」

遼「『優しいかな?』とか『信頼できるかな?』とか

考えないだろ。

ただ“反応”してるだけだ。」

健司は静かにうなずく。

遼「だからこの装置は、そのホルモン反応を抑制する。

頭をクリアにして、考えられるようにするんだ。」

健司「つまり…俺の“本能”を遮断するってことか ?」

遼「まあ、そういうこと。」

健司はプロトタイプを手に取る。

手のひらに収まる、小さくて控えめな外観だ。

しばらく黙って見つめる。

遼「でも、本当のポイントはここ。

この装置は行動の癖や傾向、

感情の反応までも分析できるんだ。」

健司「ってことは理論上……

誰かと関わる前に、

その人と一緒の人生がどんなものか分かるってことか ?」

遼「その通り。

美しい相手に惹かれても、

データが“相性が悪い”と示せば、

早い段階で分かる。

取り返しのつかない失敗をする前にな 。」

健司は装置をそっと置く。

健司「じゃあ、見た目だけで選ぶ時代じゃないってことか。

……

“理解”で選ぶんだな 。」

遼「それが狙い。」

静かな時間が流れる。

健司は装置を見つめ、興味を深めていく。

健司「変な気分だけど…早く試してみたい。

本当に動くかどうか。」

朝の静けさの中で、陽の光が作業机の端を照らしている。

二人は無言のまま座り、。

健司は試作のイヤホンを耳にそっと差し込む。

健司「よし。バージョン1.3、いってみよう。

これ、脳の視覚反応を抑えるやつだよな?」

遼「理論上はな。

ただ…全部グレーに見えてもパニクるなよ。」

遼はノートPCに入力する。

ピッという小さな音が鳴る。

健司が瞬きをする。

健司「うわ。遼。顔が見えない。」

遼「動いてるのか?」

健司「違う、お前の顔が…ピクセルみたいになってる。

8ビットのゲームキャラだぞ。」

遼「それはおかしいな…。」

遼は急いで数コマンド入力する。

健司がまた瞬きをする。

健司「待って…今、お前の顔、犬になってるぞ。」

遼「…犬?」

健司「ガチの柴犬。笑ってるし。」

遼はうめき声を上げ、健司の耳から装置を引き抜く。

遼「1.2よりひどいじゃねえか…。」

健司「俺は1.2のほうが好きだったけどな。

せめてみんなアニメキャラ顔じゃなかったし。」

突然、カップ麺の横に置かれた回路板から煙が上がる。

健司「ちょ、待て! 抜け、抜け!」

遼はなぜかカップ麺をつかむ。

遼「回路か麺か、どっちだよ!?」

健司「回路だ!」

二人は慌てふためきながら騒ぎ、

健司がコードを引き抜く。

ビープ音が止まり、静寂が戻る。

二人は床に座り込み、肩で息をしている。

遼「これ、絶対展示会優勝するだろ…。」

健司は煙の出た基板を、トロフィーのように掲げて笑う。

健司「そのうち…な。」

28 ○内村家・遼の部屋(夜)

部屋は静かで、さっきの騒ぎの名残のように、うっすらと焦げた匂いが漂っている。

工具類は端にまとめられ、作業スペースはすっきり片づいている。

遼は低いテーブルに向かい、額に汗をにじませながら集中している。

健司はペンの先を噛みながら壁にもたれ、黙ってその様子を見守っている。

遼は小さなイヤホン型デバイスに、最後のチップをそっとはめ込む。

ゆっくりと息を吐く。

遼「これで最後の接続だ。」

健司「じゃあ…もう完成?」

遼はうなずき、試作イヤホンを持ち上げる。

スリムで、きれいな仕上がり。小さな光が点滅している。

遼「バージョン2.0。

リアルタイムフィードバック。

遅延ほぼゼロ。

ホルモン反応の抑制もほぼ指示通りだ。」

健司「聞けば聞くほど危ないな。」

遼「ここまで来て、安全策なんていらないだろ。」

遼はイヤホンを、健司の耳にやさしく差し込む。

遼「テストするぞ。」

ノートPCを操作すると、小さなチャイム音が鳴る。

健司が瞬きをし、周囲を見回す。

そして遼を見る。

健司「犬じゃない。

ピクセル顔でもない。

普通の…遼だ。」

遼「そうだよ。

脳が幻想なしで見えてる状態。」

健司はイヤホンを外し、手のひらの上でまじまじと見つめる。

どこか、敬意をにじませた表情だ。

健司「本当に…動いてるんだな。」

遼「やったな、俺たち。」

健司は壁にもたれかかり、信じられないような笑顔を浮かべる。

遼「『ザ・ロング・マン』。

プロトタイプ、完成。」

二人はその場に静かに座り込む。

疲れてはいるが、どこか満ち足りた表情をしている。

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