タイトル未定2026/04/18 00:46
48 ○公園(その後)
健司と遼は、並んでベンチに座っている。
午後の日差しが木々の間から差し込み、やわらかい木漏れ日が揺れている。
健司は黙ったまま、折りたたまれたリストを遼に差し出す。
リストの名前の半分以上が、太い線で消されている。
遼はそれを広げ、目を丸くする。
遼「うわ…このペースだと、
大学の外まで探しに行かないとダメだな。」
健司は腕を組んで背もたれに寄りかかり、ふてくされたような顔をする。
健司「誰一人、うまくいかなかった。」
涼はページをめくりながら、信じられないって顔になる。
遼「じゃあ、バレー部の子は?
小学生のとき、俺めちゃくちゃ好きだったんだけど。」
健司は手をひらひらさせて、即答する。
健司「ないない。絶対タイプじゃない。」
49 ○アパート(夕方・シミュレーション/ビジョン)
質素でよく整ったアパート。
テーブルには夕飯が並び、湯気の立つ味噌汁が置かれている。
健司は箸を持ったまま黙って座り、味噌汁をぼんやり見つめている。
向かいには「妻」──バレー部の彼女が座っている。
背が高く、スポーツ選手のような存在感。
話し方は早く、強く、まるで練習中の指示のように止まらない。
バレー部の彼女「健司、廊下に靴下を置きっぱなしにするの、
本当にやめてくれる?
洗濯かごって、飾りじゃないんだよ?それとさ…洗濯物の畳み方、全部違う。
シャツが先、その次にズボン。
逆にしないで。」
健司はほとんど言葉を返さず、小さくうなずき、
味噌汁をすする。
バレー部の彼女「あと、先週のゴミ出し。
忘れたでしょ。
近所の人に見られたんだよ?
私がどれだけ恥をかいたと思ってるの?」
健司は静かに豆腐を噛み、目を伏せたまま、
何度も小さくうなずく。
バレー部の彼女(ため息をつきながら、話を切らさず続ける)「で、明日ね。
私のバレー部の同窓会に一緒に来て。
文句ナシで来るの。
ちゃんと笑って、
『はじめまして』って
全員に言うの。わかった?」
健司は深く息を吸い、無理やり笑顔を作る。
健司「…はい。」
バレー部の彼女「よろしい。
じゃあ、もっと早く食べて。
遅いんだから。」
健司は言われた通り、ご飯を口に運ぶ。
ふと天井を見上げ、天に助けを求めるような表情をしてから、
また黙って食事に戻る。
50 ○公園(連続・現在)
遼は健司を見つめ、それからびっしりと名前が消された長いリストを見返し、
呆れたように首を振る。
健司は鋭く息を吐き、耳のデバイスをぎゅっと握りしめている。
疲れ切っていて、どこか心に傷を負ったような表情だ。
遼「はいはい、わかった。
バレー部の子は…ダメだったんだな。」
健司は青ざめたまま、無言でうなずく。
遼「じゃあさ、次はどうだ?
ほら…この子とか。
なんか問題あったのか?」
遼はリストの別の名前を指さし、
いたずらっぽく眉を上げる。
51 ○小さなアパート(夕方・シミュレーション/ビジョン)
質素で整った小さなアパート。
低いちゃぶ台を挟んで、健司と若い女性が向かい合って座っている。
きちんとしていて礼儀正しいが、彼女の表情はほとんど動かない。
二人の間には、炊きたてのご飯、味噌汁、焼き魚が整然と並んでいる。
誰も話さない。
健司は軽く咳払いをする。
彼女は静かにお茶を一口飲む。
沈黙。
健司が醤油に手を伸ばす。
同時に、彼女も醤油に手を伸ばす。
指先が触れそうになる。
二人ともピタッと止まり、同時に手を引っ込める。
また、沈黙。
健司(ぎこちなく笑いながら)「……」
健司はぎこちない笑みを浮かべ、
彼女が何か言い出すのを待つ──
……何も言わない。
ただ淡々と、魚を一口食べるだけだ。
壁の時計の音が妙に大きく響く。
カチ… カチ… カチ…。
健司はちらりと時計を見る。
また沈黙。
何か言おうと口を開きかけて──やめる。
彼女はご飯を見つめたまま、ほとんど動かない。
健司は頭をかき、ため息をつく。
背もたれに寄りかかり、腕を組む。
沈黙が重く、耳が痛くなるほどだ。
52 ○公園(連続・現在)
健司は涼をにらみつけている。
健司「お前…絶対楽しんでるだろ。」
遼(明るく聞き流しながら)「いいじゃん、これは研究なんだよ。
失敗するたびに『理想の相手』に近づいてるんだって。
科学だよ、健司。科学!」
健司「あれは…拷問だよ。完全な拷問。」
遼は爆笑し、ベンチから落ちそうになっている。
遼(爆笑しながら)「で、何があったんだよ!?」
健司「ただ…座ってただけ。
何時間も黙って飯食ってたんだ。
一言もなし!」
遼は膝を叩きながら笑い続ける。
遼(息を切らしながら)「むしろその子が『運命の相手』じゃね?
ようやくお前を黙らせてくれる人だろ!」
健司は真顔で遼をにらみ返す。
健司「……犬のほうがまだマシだ。」
53 ○アパート(朝・シミュレーション/ビジョン)
健司はパジャマ姿でキッチンテーブルに座り、大きなあくびをしている。
向かいには「妻」──フィットネス系の彼女が、全身トレーニングウェア姿で座っている。
彼女は勢いよくプロテインシェイクをテーブルに置く。
フィットネス彼女「はい、飲んで。」
健司はショッキングな緑色の液体を見て、まばたきする。
健司「え…これ、何?」
フィットネス彼女「ケール、ほうれん草、大麦若葉、クロレラ、
それから…生卵。
スタミナ用。」
健司は引きつった笑みを浮かべる。
健司「そ、そう…美味しそうだね…。」
一口飲む。
健司の顔がゆがむ。
彼女は気づきもしない。
すでにテーブルの横でスクワットを始め、回数を数えている。
フィットネス彼女「…15、16、17、
健司、ほら。スクワット。今。」
健司は渋い顔をする。
健司「…まだ朝ごはん食べてないんだけど。」
フィットネス彼女「運動が朝ごはんよ!」
彼女は健司の腕をつかんで立たせ、無理やりスクワットの姿勢に持っていく。
健司はよろよろとスクワットし、危うくシェイクをこぼしそうになる。
彼女は満足げにうなずき、もう腕立て伏せに移っている。
健司は小さくうめき声を上げる。




