ゾン美と骨子
「おはよっ。てか、ゾン美~? 最近ちょっと痩せた?」
日本のとある地方都市にある公立高校。1年F組のいつもの朝の光景。
「え、マジ? 気のせいっしょー。てかアタシ、ダイエットとか全然してないし!」
派手なデコネイルで飾られた手をひらひらと振って笑う少女――みんなからは『ゾン美』と呼ばれている。
金髪のゆるふわ巻きに、指定のカーディガンをだぼっと着崩した、どこからどう見てもイマドキのギャルJK――。だが、その内心は冷や汗をかきまくっていた。
(ヤバいヤバいヤバい! これ絶対、美容《防腐》液の効き目が切れてお肉が縮んできてるだけだっつーの……! てゆーか、アタシ、冷や汗なんてかけないんだけどさ)
そう、彼女の正体は『生ける屍』。
昨日の夜もうっかり階段から落ちて左腕がもげかけ、接着剤とテーピングでなんとかくっつけてきたばかりなのだ。
「でもさー、なんか頬のあたりとかシュッとしたっていうか。ちょっと肌も青白いし、貧血とか? 大丈夫そ?」
「あー、それね! ? 最近の流行ってんの! 病みカワ系の美白メイク的な? めっちゃ新作のファンデ厚塗りしてるから!」
必死に引きつる頬の筋肉――※死後硬直ではない―を動かしながら、ゾン美は鋭い親友の追及を全力でかわすのだった。
***
「てゆーか、知ってる? ゾン美。今日さ、転校生が来るらしいよ」
「マジで!? え、めっちゃ気になる!」
「噂なんだけどさ。何かぁ、やたら骨のある子らしいって」
「へぇ~。骨のある子かぁ……」
そんなことをいつものように話していると、これまたいつものように担任の先生が教室に入ってきた。
「えー、みなさん。既に知っているかも知れませんが、今日はこのクラスに新しくきた転校生がいます」
転校生がくる、ということは知っていても、やっぱりザワつくクラス。
「えー、それでは……。入りなさい」
先生がクラスの外の廊下の方に向かって、声を張り上げる。そして、数瞬後にクラスの扉がガラッと音を立てて開かれた。
思わず、期待にゴクリと固唾を飲んで、一誠に扉の方へ視線を向けるクラスメイトのみんな。ゾン美も、一体どんな奴なのかと扉の方を見る。
扉を開けて入ってきた転校生は、クラスのみんなの視線に動じることなく勢いよく教壇に立った。
「チィーーーーーーッス!!!!! 骨子でッス! 気軽に骨ちゃんって呼んでね♪」
そして、元気いっぱいに言うと、両手で全力ピースをキメた。
その瞬間、クラスは絶対零度並に凍りついた。
それもそのはず、転校生『骨子』はガチの骨だった。マジで。文字通り。
全身骨で、ブレザーをオシャレに着崩し、頭 蓋骨……じゃなくて、頭に赤い花のヘアアクセをしている。
(骨のある子ってゆーか……ガチの骨だし!)
心の中でゾン美は思った。みんなと同じく、凍りつきながら。
でも、ちょっと心臓がドキリとした。ドキリとする心臓なんて、もう止まって動いてない はずなのに。
(コイツとは、何だか仲良くなれそうだわ)




