4-7 再会
あるとです。
やっと東條と俊谷が再会しました。
キャラ作りも大変で色々疲れるところもありました。
が、Chapter.4は今半分辺りの進捗です。
Chapter.5に直接つながる話なので、
もう少しお楽しみください。
同時刻、名古屋。HIGH-CITYガレージ内。高市吾郎の元に、ある1基のエンジンが届き、そのベールをはがしていた。
超軽量仕様、トヨタ2JZ-GTEエンジン。2000GTに搭載することを想定して製作された、日本最高と呼ばれたエンジン技師の、桜井啓人最後の作品。
「……兄貴、ようやく会えたな、久しぶりに。」高市は2JZのヘッドを撫でるように触れた。金属なので冷たかったが、高市はどこか温かさを感じていた。
5年前に死んだ自身の兄の、最高の遺産にまた会えた、それだけで高市は嬉しかった。「……そういや、兄貴……。」
『軽量化できる所は軽量化したけど、エンジンブロックだけは違う。重たい鉄の鋳鉄ブロックな。』6年前の夏の福岡。桜井啓人がまだ生きていた頃。
啓人は暑い中、熱のこもったガレージの中でエンジンを作り続けていた。啓人の身体からは汗が滲み出ていて、いつ熱中症になって倒れてもおかしくない、そんな状態だった。
だが、こんなことはしょっちゅうあった。『軽量仕様なんだろ?だったら、アルミブロックの方が軽いし、熱も逃がしやすいし。
それに強度だって、鋳鉄と比べても悪くはないはずじゃあ……?』
『確かにそうだ。速さを求めるうえで、軽さは一番に重要だろう。だが、それにも意味は十分ある……やっぱ頑丈だからな、鉄ブロ。
軽量なアルミブロックよりも優れてると思ってる。なんでか分かるか、吾郎?』高市は腕を組んで考える。『耐久性をとったのか……高いスピードで長く走れるように。』
『そうだ。』啓人はニンマリと笑いながら、高市に続きを語る。これまで培ってきたエンジン工学の技術と経験を伝えるために。
『公道400km/hはフツーの世界じゃない。そのフツーじゃない世界を走るためには、一瞬の速さだけじゃダメだ。
高い速度で長く巡航できる、長距離走行能力が必要になる……鋳鉄ブロックを選んだのは、それが理由だ。
にしてもまぁ……お前のロータリー見たときはビックリしたな。ホント、よくあれで380も出せたな。
耐久性の欠片もない、インタークーラー取っ払った、あんな不安定なワンナイト仕様で……。』
啓人は高市が乗ってきた白いSA22C サバンナRX-7をみて、そう呟いた。高市は、啓人に高市スペシャル SA22Cの良さを説く。
『仕方ねー選択だろ、ありゃ。あと1馬力、あともう1馬力……汚え空気吸うとか、そーいったデメリットはあっても、不安定であっても、少しでもいいからパワーを稼ぎたい。
兄貴だって、そーゆーのはよくわかるはずだ。それに、その気持ちを身をもって理解してるだろ、この業界長いんだからよ?』
『分かる分かる……そーゆー気持ちも大事だよな。ま、ワンナイト仕様には憧れるけど、俺にソレをやる度胸はないからあんま関係ねーかもな……。』
「なんて言ってたっけ……。そのクセ、こういう半端ないエンジン作るんだもんな。あんま信用ならねーな、お前の言葉はよ。」
高市は明かりの真下にエンジンを移動させ、ガレージのシャッターを閉める。白い蛍光灯が、無骨なコンクリートガレージの灰色を明るくしていく。
「とはいえ、すぐには載せらんねぇな。1Jで行けるところまで行きてぇし……それまでは、お預けだな。さてと……検品作業、始めっか!」
「……俊谷。」俊谷は東條らが目の前に現れた事の情報処理が追いつかず、持っていた買い物袋を床に落としてしまう。
「なんで……ここに……?」「……。」東條は緊張しているのか、何も喋れなかった。「真司。東條くんは、お前にずっと会いたかったんだとよ。
お前が東條くんに会いたいって言ってたの知って、すげえ喜んでたんだ。……話、聞いてやったらどうだ、ふたりとも?」
諏訪木の言葉が部屋に響く。2人は、すぐにはなにも喋らなかった。数秒の静寂のあと、俊谷が呟く。
「……だ。」
「……?」3人は、俊谷の呟いた言葉がよく聞こえなかった。が、東條だけは彼の言おうとしている言葉を聞き取れていた。
「真司、違う。」「嘘だ……ここでなら、みんなに会わなくて済むからって言ったのも、全部ウソだったってこと……?」
俊谷は頭を抱えて唸りだす。頭のなかで理解が追いつかず、パニックになっている様子を見せた。「……牧夫クンの嘘つきッ!」
俊谷は壁に寄りかかりながらそう叫ぶ。そして、走って玄関の方へと走っていき、そのまま玄関を飛び出していった。
「真司、待ってくれッ!」東條が俊谷の後を追って、彼も玄関を飛び出した。「な、東條さんッ!」桜井は後を追おうとした東條を止めようとした。
が、諏訪木が桜井の手を掴んで、それを止めた。「先輩……離してくださいよッ!」「行かせろ……アイツ個人のゴタゴタに、ア俺達が首突っ込むのは、ちと野暮だ。
人間関係のケジメくらい、アイツにつけさせてやれ。」桜井は歯をかみしめて、その場に座りこむ。(何やってんだ、俺。こんなとこで見てるだけしかできないなんて……ッ!)
俊谷は走って、階段を駆け下りていく。「なんで……なんで皆んなして、俺を捕まえようとするんだ……!」
「頼む、待ってくれ!」3階、2階、どんどん下っていく。2人の行き違ってしまった思いが逃げていく、そんな風に、2人は走っていった。
「なぁ、待って──」1階に降り立とうとした、その時。東條が足を踏み外し、階段から転げ落ちてしまう。
「……時名ッ!」東條はゴトゴトと音を立てながら、階段を転がっていく。10段以上の高さを頭から滑り落ちた故に、東條は頭から血を流した。
「ッ……はぁ……はぁ、ッ……!」東條は痛々しく転んで怪我を負ったのにも関わらず、彼は立ち上がった。
「話を……聞いてくれよ……頼む!」東條は汗と血を流しながらも、やっと壁にもたれかかった。文字通り血の滲む思いで、やっと俊谷の動きを止めた。
「俺、勘違いしてたんだ……ずっとな。お前を心配して、みんなで探してるって事にして、1人ぼっちになるのを怖がってた。」
息がだんだんと細くなっていく東條。彼に振りかかる痛みは、もう引き始めてきていた。「お前を親友として、1人の走り屋として……好きだったから!
最高の相棒だって、そう信じてた。だから俺は、そんな仲間との急な別れが……いつまでも怖かったんだ。
現実を認めたくなかったから、他人の幻覚を信じて探してた……でも、幻覚じゃなかったんだ。お前はこうして今も生きてた。」
俊谷は何も言えなかった。彼はずっと怖かった。NEXTECZの仲間に会うこと、そして東條に会うこと。
自分が消えたことで、どれだけ傷つけたのかを見ることが、ずっと怖かった。諏訪木には、会いたいと強がっていたが、結局は弱いまま、何も変わってなかった。
か弱いままの自分を、傷つけたくなかった。傷つくのが怖かった。が、目の前に居るのは、自分に生きていてほしいと願って、会いに来てくれた男。
自分と顔を合わせたいが為に、怪我をしてまで追い続けた男。そんな男の前で、今さらそんな戯言が言えるのか。
「……俺も俺で馬鹿だった。お前が俺を怖がってるのを知らずに、いつまでも追い続けてさ。本当に……悪かった……ッ!」
東條は涙を流しながら、俊谷に謝罪する事しか出来なかった。彼と面を向かってできる事、それは今まで俊谷にしてきた事に対する謝罪だと、東條は心の内で分かった。
「落ち着いたか……真司?」「……時名。謝んなきゃいけないのは、僕の方だ。なんで、生きてること隠してたんだ……。」
今まで黙っていた俊谷が、東條に言葉を返した。ずっと言えてなかった、謝罪の言葉。俊谷にとっては、とても重たいものだ。
それでも俊谷は、力を振り絞って言った。「ごめん、時名ぁ……ッ!」東條は涙を流した俊谷を抱きかかえながら、彼に諭す。
「俊谷……お前はこれから逃げてもいいし、またチームに戻ってきてもいい。ただ、俺はちゃんと生きてるんだぞって、それだけはキチンと教えてくれよ。
お前のこと、仲間になんて言えばいいのか、分かんねえからよ……ッ!」東條はニッと笑ってそう言った。
「僕は……僕は生きてる。ちゃんと、生きてるよ……ッ!」
その直後、結局心配になって東條たちを追ってきた水谷が現れた。「なんだこの血の跡は……って、時名ッ!頭から血噴いてんぞお前ェ!」
水谷は階段や床にこびり付いていた血の跡をみて驚いた。「大丈夫だァこんくらい。俺にとっちゃ単なるかすり傷だ!」
「んな訳ねえだろ、病院だ病院……真司、お前……。」水谷の目に、ちゃんと生きている俊谷の姿が映る。
生きてると知ってはいたものの、ちゃんと再び会えたことが嬉しかった。「千代……ごめん、生きてる事黙ってて……僕、生きてるよ。」
「……真司……ィッ!」涙を堪えきれなくなった水谷は、涙を溢れさせながら俊谷に飛びつく。「良がっだぁ〜、ちゃんと生きでるよォ〜!」
「あぁ……フフッ。」俊谷は思わず吹き出す。「そう……僕、ちゃんと生きてるんだ……!」
「なぁ真司。そういや、お前が言ってた、"皆して捕まえようとする"ってどういう意味なんだ?」
普通うるさいよね、夜中にこんな事して。
でもそこに関しては無視してください。
防音壁がしっかりしてるって思ってください。
もう設定作るのめんどくさいです。
以上、あるとでした。




