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その6
〈なかよしおともだち公園〉の第二グラウンドにブルーシートを敷いて、まどろみながら妹を待つ、という生活が軌道に乗り出してひと月ほど経った。
妹の京子はほとんど休みなく昼食を持ってきてくれていた。
京子が弁当を持ってきてくれない日はすべて雨の日である。雨の日は〈なかよしおともだち公園〉ではなく、××市立図書館へ行くことになっている。
ちなみに雨天時の昼食は「スーパーでおつとめ品を見出して、それを食べる」と取り決めている。
十月以降の京子は弁当をふたつ持ってきては、何のことわりもなく、ぼくのとなりにすわってそのひとつをあたりまえのように食べていた。
こちらのほうは取り決めたおぼえはなかったし、提案されたこともなかったし、許可したこともなかった。しかし弁当を毎日持ってきてくれることにたいしてぼくは兄貴として感謝はしていたので、黙認していたのだ。
この日も、
「なんで、お前も食べてるんだ?」
ともうちょっとで言いそうになったけれど、けっきょくそれも唐揚げといっしょに腹に納めておいた。
「ねえお兄ちゃん。唐揚げ、昨夜のだから、かたくなっちゃってるね」
「だいじょうぶだよ」
「ねえ、海苔の下におかかがあったほうがいい?」
「どっちでもいいよ。たいへんだったら、ふりかけでもべつにいいよ。あと卵焼きのなかにこんなにひき肉とか、いれなくてもいいよ」
「それ、オムレツだよ」
「オムレツか……オムレツのなかに何もいれなくていいよ。面倒だろ」
「プレーンオムレツでいいのね」
晴れていれば、妹が帰った午後もだいたい公園に残り、もよりの水道をお借りして歯磨きをする。
ブラッシングを終えて、野良猫も脱帽するくらい念入りにうがいをしたあとは、ぼくはふたたびブルーシートに寝っ転がり、そして、
「ん、来たかな――ああ、ちがった、あれはテニスウェアの婦人だ」
ひとみちゃんを待つのである。
ひとみちゃんはぼくよりたぶん三つか四つくらい年下の女の子で、毎日ではないけれど、けっこうひんぱんにこの〈なかよしおともだち公園〉に来ている。
ひとみちゃんとは、ひとみちゃんが公園内にある自動販売機の前で困っていたときに、
「どうしたんですか?」
とぼくが声をかけたことからなんとなくしゃべるようになって、ちなみにそのときは、
「お金、入れたんですけど、出てこないんです」
とのことだったので、ぼくは、
「そうなんだ――こういうときはね、こんなふうにしてみると、困難を乗り越えることができるのさ」
と言って自動販売機とがっぷり四つに組んだり、ガンをとばしたりしたのだけれどブツは出てこなくて、そのあとお客様サービスセンターに電話したのだけれど居留守を延々と使われて駄目で、そのあともう一度自販機前にもどってボタンをてきとうに押すと一瞬の間のあとガシャガシャンとキリンレモンのロング缶が出てきて、
「あれ♪」
とふたり同時に首をかしげることになったのだけれど、それ以来公園でばったり会えば、
「あれ♪」
となって、かならずお話しすることになっていて、そしてこんにちでは、かなりうちとけた感じで雑談するまでになっている。




