↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
49/50

49


      その49


 ぼくはいつもあんずちゃんのことを思いだしていたわけではなかったけれど、それでもこうなると一刻も早くあんずちゃんのあのきれいなもち肌を拝みたかった。


 とはいえ右に曲がっても左に曲がっても、階上にあがっても階下に降りても、エスカレーターと記されているがどう見ても滑り台にみえるそれを滑り降りても、いつまでたっても、あの駄菓子屋さんにはたどり着けなかった。


 それでいいかげんあせってきたぼくは、とりあえず〝はぐれ青年ヒマヒマ派〟になってしまったことをまず率直に認め、つぎに迷子センターのようなところにお世話になってなにかしらの助言をいただくことに方針を一本化したのだが、しかしどこにも人っ子一人いないことになっていたので、いくら一本化しても迷子センターそのものを見つけることができなくて……で、しかたがないので「大広間は無料です(映画鑑賞はヘッドホンをご利用くださいますようお願い申し上げます)」という貼り紙が貼ってあったリラックスルームみたいなところに、


「ふむふむ、こっちの棚のビデオは有料なのね……」


 とチェックしながらおもむろに入って行った。


 屏風で仕切られた大広間の座布団にすわって無料コーナーの棚からてきとうに選んだ「UWAYAKU」というドキュメンタリー映画を鑑賞してみると、序盤は、


「主役が仮眠ばっかりしてて退屈だなぁ」


 と思っていたそのドキュメンタリーも一時間くらい観ていると、


「ほら、やっぱり天丼たのんだよ」


 ぼちぼちおもしろくなってきて、上役のひとりが書類の束を前にして、いったいこれからその書類をどのようにさばくのか、というシーンまで来ると、なにげにテレビデオのボリュームを何段か上げたりもしていたのだが、


「この書類片付けたら、また天丼取るぜ、ゼッテー」


 その上役はわりとかんたんに書類の束をチェックしてピンチを脱すると、そのあとはとんとん拍子に出世していって、


「出世祝いにどうせ天丼注文するんだろ、特上の天ど、あ……」


 で、最後には玲子と結婚することとあいなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。