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その47
このあとも祝賀会はつづいた。××市長がわざとらしく駆けつけて姉たちにお祝いの言葉を贈ったり、ポテトチップスという名前の例のロックバンドが、ビートルズっぽい曲を熱唱したりした。
ふと見ると、向こうのほうではイカンガーお爺さんと、クレハピさんと、あともうひとり六十代くらいの見知らぬ翁が楽しそうに日本酒らしきものを飲んでいる。その列の末席では野村夫妻がしっかり抱き合いながら、ちくわの天ぷらを夫婦共同作業で双方から咀嚼しあっている。そして入口から見て二列目の後方に三原さんとひとみちゃんがすわっていた。
銚子と猪口をもってそちらに移動すると、三原さんは手酌でやっていたキリンのラガービールをいったん置いて、
「どうぞどうぞ」
と席を空けてくれた。ひとみちゃんのほうは古めかしいビンのオレンジジュースを飲んでいる。
「ひとみちゃん、お酒は飲まないの?」
「うん。わたし、お酒はどうも苦手なの。いままで何度も練習はしてみたんだけど……」
「なんだかんだ言っても、酒が飲めるというのは、付き合いが広がりますよね、沢倉さん」
ひとみちゃんの実兄の三原民吾さんは、ぼくのために大皿から何品かつまみを取ってくれつつそう言った。
「あっ、すいません――まあ、そうですけどねぇ。でも、ほら、こういうのは体質もあるんでしょうからね」
「うん、そうだと思う。だってわたし、ビールをちっちゃいコップで一杯飲んだだけで、くらくらになっちゃうもん」
しばらくそんな感じで三原さんきょうだいとお話ししていると、いつのまにか、ホールの中はなにやらざわめきだしていることになっていた。舞台のほうを見てみると、またむちむちしたからだつきの例の伊藤直子さんがマイクを持って再登場している。
「みなさぁん。注目してくださぁい。です♪ いま、急遽、すばらしい方が、お祝いに駆けつけてくれました。誰だと思いますかぁ? そう、あの人です。どうぞ! です♪」
伊藤直子さんがそう言って舞台から退いていくと、入れ代わるようにヒデタ支那虎がポテトチップスの四人を従えて登場してきた。前置きのようなものもないままにポテトチップスの演奏で『私の私道』をいきなり歌い上げる。
「あっ! 三原さん! 支那虎ですよ! 三原さん!」
ぼくは感激して三原民吾さんにそう言うと、三原さんはこちらにうんうんとうなずいたのちに舞台に向かって指を三本たてた手を高く上げて口の動きだけで「三曲、三曲」というようなことを伝えていた。
「きょうは、チームかおりが優勝して、なおかつ最優秀選手賞にはかおりさんも選ばれたということでございまして、ほんとうに心から、わたくしもうれしく思います。かおりさん、おめでとう、そしてありがとう。そして、このひと時にも、ありがとう。そして、今日という一日と、明日という日に、ありがとう。次の曲は『ウイスキーボンボンよ何故にお前は』です」
ヒデタ支那虎はそう言うと、胸にさしていた赤いバラをもよりの女性に差し出しつつ二曲目をうたい出した。




