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      その46


 〈なかよしおともだち公園〉の看板に記してあるところによると、バーベキュー広場というのは、〝健全な青少年の育成のため〟に設けられたらしいが、大会当日に青少年はほとんどいなかった。


 姉は幼少のころから鉄板には精通していたが、このバーベキュー大会に出場するのは今回がはじめてで、だからなのか、京子によると姉は大会前日に怠け者神社に行って祈ったりしていたらしい。


 少し早めに広場に行って、バーベキューの用意を大江さんたちといっしょにしているとき、ぼくは京子に今朝きいた姉のそのエピソードをふと思い出して、昨夜は眠れなかったのではないか、緊張して通常の力が出せないのではないか、というようなことをいろいろ考えてしまったのだけれど、


「遅れてごめんね」


 と広場にやってきた姉は、オーラがあったというと大げさかもしれないが、いつもより表情がてかてかと輝いていて、だからぼくは、


「きょうは、だいじょうぶだな」


 と安心することになって、で、案の定、大会はぶっちぎりで優勝した。


 優勝の吉報は瞬く間に人びとに知れわたることになり、その日の晩はいつのまにか〈三途の川〉で優勝祝賀会をすることにセッティングされていたのだけれど、例によってたしょう早めに〈三途の川〉におもむいてサウナや温泉を自らに課したハードルをすこしだけ上回るくらいこなしてから祝賀会がおこなわれる宴会ホールに、


「どうなっているかなぁ」


 などと思いつつ、なぜかやや忍び足で入ってみると、何列もあった細長い座敷テーブルには、どこかで見たことがあるような人たちが大集合していることになっていて、ホールの正面の舞台には司会の方も、もうスタンバイしているのだった。


「みなさぁん。わたくしは、今晩の優勝祝賀会の司会をつとめさせていただきます、伊藤直子です。どうぞ、よろしくお願いします。です♪」


 とぜんたい的にむちむちした感じの司会者は言った。


 こちらの伊藤直子さんは、たしか先日のヒデタ支那虎の歌謡ショーのときの司会もしていたはずだから、もしかしたら〈三途の川〉の専属の人なのかもしれなかったが、まあこれはその人なりの個性なのかもしれないけれど、この伊藤直子さんの司会ぶりというのはちょっと押しが強いというのか、しゃべりすぎてしまうような面があって、だから――当然そうなってしまうのであるが――舞台の上に呼ばれて出てきた姉と大江さんといずみちゃんは、ほとんど返事だけで、ただ突っ立っているだけになってしまっているのだった。


 伊藤直子さんはいつまでもしゃべりまくったあげく、最終的には、そもそもこんなバーベキューなんかをなぜやろうとしたんですか? というような聞きようによってはかなり辛辣な質問を笑顔でぶつけていたので、いよいよ舞台周辺は騒然となっていたのだけれど、ちょうどそんなときにあの高林夫妻が舞台の袖からささささぁと登場してきて「チームかおり」のために新曲を披露してくれるという名目で伊藤直子さんと姉たちを上手く引き離してくれたので、このあとは、そんな流れだったので、高林夫妻の新曲を聴くこととなった。


 高林夫妻は案の定、自然をたいせつにしましょう、空気を汚さないようにしましょう、動物たちと平等に地球の恵みを堪能しましょう、というメッセージにあふれた歌を披露していたが、とくに奥さんのほうが悦に入っているだけで、歌のほうは実質だれも聴いていなかった。


 ぬる燗のお銚子をはこんできた配膳係の子も舞台のほうをちらちら見ながら、


「ジュディ・オング気取りですよね」


 とぼくに耳打ちしていた。配膳係の子は誰かに、


「ペーピー、手空いたら、こっちお願い」


 と呼ばれると、「はーい」と返事して、そちらに歩いていった。


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