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      その40


 あんずちゃんは先のような感じでしゃべりまくると、さすがに息が切れたのか、いったん黙り込み、それから、


「なんだか、のどが渇いちゃった」


 とつぶやいた。


「たくみさんは?」


「うん。ぼくもちょっと渇いたな」


「なにかいま、お持ちしますね」


 あんずちゃんはそう言うと、ピョンという感じで立ち上がり、それからかわいいガッツポーズみたいなことをしながら、


「がんばるもん」


 と奥のほうにまたさがっていった。


 いま、あんずちゃんがぼくのことを「たくみさん」と呼んだのは、もちろん気づいていたけれど、それにたいしては、あえて前々からそうだったというような顔をしていた。


「お待ち遠さま、たくみさん」


「すいま、あ」


 あんずちゃんがお盆にのせて、


「どうぞ」


 と出してくれたものは――まあたしかにこれでも水分は補給できるだろうけれど――またさっきの「オリジナル・クリスマスケーキ」なのであった。


「……」


「のど渇いちゃったね。はやく食べましょう」


「いいんですか?」


「召し上がれ」


「やったー。食べまーす。こうなったら、なんでも食べまーす」


「ねえ、たくみさん。このオリジナル・クリスマスケーキ、ホントはどう?」


「この生クリームは手作り?」


「はい」


「やっぱり。この生クリームは、ホントおいしいよ」


「わたしはこれを全面に押し出して、また上役たちを、わたしのまわりにかじりつかせたいと思ってるんです」


「でもさ、その上役っていわれている人たちは、普段どこにいるんだろう?」


「上役たちは上役専門の上役室で書類などをチェックしています。でも、それは一種のカムフラージュで、ほとんどの上役は一日のうちの大半を睡眠に費やしているのです」


「ふむふむ、おれもやってた――机の前に突っ伏して仮眠してるんでしょ?」


「いいえ、ちがいます。そういう方法で寝ている上役も若干いますが、真の上役、つまりより地位が高い上役は、それ専用の部屋である『カプセル仮眠ルーム』で寝ているのです」


「えっ、カプセルってあの、一般のお客さんも別料金で使えるやつ?」


「そうそう。あのカプセルルーム」


「じゃあ、カプセルルームの場所とか、あんずちゃんは知ってるのかな?」


「もちろん知ってますよ」


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