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その31
そんなふうに閉店までお客さんが出たり入ったりすることになっていたので、けっきょくぼくは玲子のお父さんやお母さんとまともにお話しすることはできないでいた。
それで夜中ちかくに揚げだし豆腐一丁でいつまでもちびちび飲んでいた最後のお客さんがようやく帰って、
「いよいよだな」
という感じで胸が高鳴ったりもしたのだけれど、お父さんに言われるままに風呂をいただいて、
「いいお湯でした」
と言ったのちに、お母さんが出してくれた運動着を着てしまうと、からだはもう就寝する方向に傾いてしまうことになって、そんなわけでぼくは――もちろんお父さんやお母さんたちにすすめられたからだが――玲子の実家にこの夜は泊まることとなった。
二間あるうちの一部屋はお店になっていて使うわけにはいかないので、寝室は消去法的にもう一つの六畳の和室ということになるのだが、お父さんとお母さんがおなじ部屋で寝ているとはいえ、洗濯ひもを部屋の真ん中にかけたのちに、そこにタオルケットを干すようにしてお互いのプライバシーをまもる趣にしてあったので、ぼくは玲子の布団に入れてもらいながら玲子と親密なお話を心置きなくすることができた。
「さっき、なかよしおともだち第二グラウンドで転がりまくったときもお話ししたけれど、ぼくはいま失業中なんだ」
「うん」
「だから、明日にもすすむ叔父さんに相談して、どうにかしようと思っているのだよ」
「仕事、好きなの?」
「いや、そういうわけじゃないけれど、きみときみのオーバーオールのためだからね」
タオルケット越しの玲子のお父さんとお母さんは声を掛け合いながらふたりでストレッチ運動だかアクロバット体操のようなことをしていたが、ぼくも玲子もそれについては知らぬふりというか、酔っぱらいがコインランドリーで寝ていても黙認しているようにご両親を放っておいた。
「住居問題はここに住めばいいからもう解決しちゃってるし、きょうはオーバーオールだったからたくみさんよくわからなかったかもしれないけれど、わたし骨盤がしっかりしていて安産型のボディだから、お世継ぎ問題も解決しちゃってる」
そんなわけで新居についてはぼくがここに住むという方向で落ちついたのだが、翌朝目を覚ましてみると、お母さんがぼくの骨盤を枕にして寝ていることになっていたので、
「やっぱり住居の問題はあるな……」
という気持ちにぼくはふたたびなって、で、すすむ叔父さんにそのあたりも相談してみようと思って、伝言を残したのちになるべく静かに着替えて自宅に帰ることにした。




