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その27
京子がお弁当を持ってこないこの日も〈なかよしおともだち公園〉にぼくはいつもと変わらずおもむいたのだけれど、さすがにもう季節的にブルーシートの上で朝食後ずっとじっとしているのは寒かったので、菓子パンを食べたあと、今までのようにすぐにはブルーシートに横にならないで、ある程度あたたかくなってくる十時くらいまで、てきとうに散歩コースをぶらついたり、なるべく日があたるベンチにすわったりというふうにスケジュールを変えることにした。
それでわりとよく日があたるベンチにすわって、池で釣りをしているのびのびパンチパーマの初老の紳士の一挙手一投足を、ぼくよりさらに時間に余裕のありそうな白い老猫と共にひたすら見学していたのだけれど、誰とでも親しく交流している例のクレハピさんがどこからか歩いてきて、
「沢倉さん、おはようございます」
と声をかけてきてくれることになって、で、ぼくのほうも昨夜の興奮がまだどこか残っていたのか、
「おはようございます!」
といつもよりやや元気よくあいさつすることになった。
「きょうはずいぶん、がんばるんですねぇ」
「さすがにちょっとヤナギの木の下だと寒いものですから」
「もう少し時間がたつと、あたたかくなってくるんですけどねぇ」
「そうですね。それまではごろごろできないですね」
元気なあいさつのあと、ベンチにすわってこのような会話をぽつぽつ交わしていると、話はいつのまにか、昼食を持ってきてくれている妹のことになり、
「あのかわいいお嬢さん。沢倉さんの恋人なんですか?」
という感じでクレハピさんに質問されて、こっちは一瞬キョトンとなってしまったわけなのだが、考えてみればクレハピさんに妹の話はまだしていなかったので、そんなふうに勘違いしてしまうのもまあ無理もなくて、そんなわけで、
「あれは妹なんですよ」
とクレハピさんにともかくおしえたのである。
「妹さんなんですか」
「ええ。でも今日は妹、昼飯持ってこないんですけどね」
「そうなんですか。じゃあ今日のお昼は、どうなさるのですか?」
ぼくは、
「今日みたいな日はしょうがないから、どこかでうどんでも食べますよ」
とてきとうにこたえた。
「うどん……じゃあ、沢倉さんはラーメンなどは召し上がられますか?」
「まあ、ラーメンも嫌いじゃないですよ」
ぼくの返事をきいたクレハピさんは、
「おいしいラーメン屋さんを知ってるんです。よかったらきょうのお昼はいっしょにそのラーメンを食べませんか?」
といってきたので、ぼくはたまにはそういう変則的な昼食もいいだろうと思って、
「じゃあ、今日はいっしょにラーメン食べましょうか!」
とこたえたのだが、クレハピさんが知っているそのラーメン屋さんというところへは、歩いて行ったり自転車なり自動車なりに乗って行くというわけではなく、なんでも、
「出前をとりますから」
とのことらしくて、だからとくべつ待ち合わせ場所とか出発時間などは決めなくてよかった。
「お昼ちょうどでいいですか?」
「いいですよ」
公園の時計が正午をお知らせすると、出前を持ってきてくれた女の子がブルーシートの前にあらわれた。




