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その26
京子はぼくの部屋にささっと入ると、
「ねぇ、あしたも公園行くよね?」
と言った。
「雨降らなければね。あした天気どうなんだろう?」
「晴れだよ」
「じゃあ、行くよ」
「うん――でもわたし、明日、お弁当もっていかれないかもしれない……」
「わかった。なんか用事か?」
「うん。蚤の市」
普通だったらそれで話はおしまいなのだが、このときの京子はすぐにぼくの部屋から出ていかないで、いつまでも、もじもじしていた。おそらく、その〝蚤の市〟に関連したことで何か手伝ってほしいことがあったのだろう。しかしぼくは京子が定期的に参戦している蚤の市だかフリーマーケットだかにたいして、
「あのポータブルゲーム機、バッタもんらしいぞ。ラコステのマークだって、ワニ丸っちいし」
という感じで良い印象がないので、掛け布団を空中で二秒くらい平行にしつつふんわりソフトに敷いたりして、うっちゃっておいた。
それでも妹はまだぼくの部屋を出ていかなかったので、ぼくは妹に、
「ちょっと疲れたから、マッサージしてくれよ。足のやつ」
と逆に頼んだ。兄貴の知恵なのである。一枚上手なのである。ちなみに妹の足マッサージは歴史ある熟練した尊敬に値する技術なのである。
「うううう。イタタタタァ。ああああ、痛いなぁ。ん? いや、だいじょうぶだよ、効いてる効いてる。痛くて効いてる。んんんんんんんんんんんん。京子、もうちょいアウトサイド。そう。うん、そこ。それで、そこ、もうちょっと、体重かけていいよ。もっと。もっと! え? これで全力? ということは、おれ、やっぱりこってるのかなぁ。まあじゃあ、とりあえず、乗っかっちゃっていいや。いいよ乗っかれ! うううううううううううう。ああ、イタタタタァ。痛いけど、効くなぁ。んんんんんんんん。よし、それでさ、もうちょっと背中の上のほうにスタンスとって、サーフィンみたいに、うううううううううう、よし、いったん降りてくれ。で、今度は……なあ……寝ちゃったら……電気消しておいてくれ……」
「うん」
翌朝目を覚ますと、ちゃんと電気も消えていたし、掛け布団もかかっていた。木彫りのカラスを重しにした枕元のメモには、
「お金ありがとう。頼まれた物、出てたら買っておくね。K」
と書いてあった。




