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その24
〈三途の川〉は受付のさいに、タオルだとか歯ブラシだとかシェーバーだとかを、
「はい。ごゆっくりどうぞ」
という感じでわたしてくれるのだが、そのときに着るものは、浴衣かジャージかムームーかを選ぶことができる。ちなみにぼくは今回も無難に「浴衣」を選んでいた。
三原さんとサウナの手合わせをしたのちにその浴衣を着て宴会ホールへおもむくと、タカシナさんたちはもう左端のほうに席を取っていた。
タカシナさんのとなりと向かいには――おそらくタカシナさんといっしょに来たお友だちさんだろうが――ぼくやタカシナさんとだいたいおなじくらいの年格好の女の子たちが行儀よくすわっていた。タカシナさんもそのふたりの友だちも、やはり浴衣を選んでいた。
しかしぼくは今さっきすれ違った四十前後のムームーを着た婦人を体感してムームーにたいする考えを改めていたので、せめて一人だけでもムームーだったらなぁ、とはちょっと思ったのだった。
「すみません遅くなりました。つい長湯してしまいまして」
とぼくはタカシナさんの斜向かいにすわりながら言った。
「だいじょうぶ。わたしたちも今さっきすわったばかりだから」
それからタカシナさんにきょう初対面になるタカシナさんのふたりの友だちを紹介してもらうことになって、ぼくの向かいにすわっている子が「いずみちゃん」という子で、となりにすわっている子が「西田さん」ということだったので、ぼくは彼女たちに、
「はじめまして。沢倉です。よろしく」
という感じでとりあえず自己紹介をしたのだけれど、このあとみんなに合わせてぼくもビールをとりあえずたのんでそれをグイグイ飲み、そして枝豆やモツ煮や唐揚げなどをてきとうに食べながら、西田さんやいずみちゃんたちと、ヒデタ支那虎のことや、ティッシュ綿棒のことや、先日××市民テレビでも特集を組んでいた界隈の獣害問題などについて、初対面でたしょう緊張しながらもなんとかお話ししていると、
「みなさぁん。わたくしは、今夜、ヒデタ支那虎の歌謡ショーの司会をつとめさせていただきます、伊藤直子です。どうぞよろしくお願いします。です♪
さあ、いよいよお待ちかねの、ヒデタ支那虎の歌謡ショーがはじまりますよぉ! 準備はいいですか? です♪」
と舞台の隅っこに立っていたむちむちした体型の女性司会者がお客さんたちにいよいよ呼びかけてきて、そんなわけで、ぼくたちは、
「あっ! もうすぐ、はじまるよ。観よう」
と、しばし食べたりしゃべったりするのをやめて、ヒデタ支那虎が登場してくる舞台に集中することにした。
「よし! オープニング曲は『私の私道』だ――おれ好きなんだ、この曲」




