17
その17
「沢倉さん、こんにちは」
ぼくに気がついたクレハピさんが、こう声をかけてきてくれたので、
「クレハピさん、こんにちは」
とぼくも言って、ふたりのほうにちかづいていったのだけれど、いままでしゃべっていたイカンガーさんはぼくの登場をクレハピさんとのお話を打ち切るいいタイミングだと思ったのか、
「それじゃあ」
とクレハピさんに言ったのちにぼくにちょっとだけ会釈するようにしてまた走りだしてしまった。
そのあと、
「沢倉さん、先ほどなにか〝イカンガー〟などと叫んでおられましたけれど、それはいったい誰なのですか?」
とクレハピさんがきいてきたので、
「ええと、それはですねぇ……」
となりながらもどうにかイカンガー命名について説明したのだが、
「なるほど、そうですか。あの方は〝村山さん〟とみなさん呼んでいるのですけれども、沢倉さんがせっかくそのような呼び方を考えてくださったのなら、今度村山さんにきいてみますよ」
というのには、なんとも返事のしようがなかったので、ぼくはただ曖昧に、
「あーうー」
という感じでお茶を濁しておいた。
「しかし、よく走りますよね」
「ええ。なんといっても今年はマラソン大会の三連覇が、かかってますから」
それからクレハピさんは十二月におこなわれるそのマラソン大会の詳細と、あともうひとつ、なにげにもうすぐ開催されるらしいバーベキュー大会というものの情報をていねいに細かくおしえてくれたのだけれど、ぼくはマラソンはともかく、バーベキューにはほとんど関心がなかったので、相づちを打っていてもじっさいはほとんど聞いていなかったのである。
「ん! さっきの色気のある婦人、展望台に上がってる――声かけてみようかな……」




