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その16
公園にもどっても、
「た、たた、た、たたたたたたたた、た、たた、た、たたたたぁ、ウォンチュ♪」
まだまだ高揚したままだった。
そんなわけで気持ちを落ち着かせるために、たまには展望台に登ってみることにしたのだが、最短コースで展望台に向かうと、いつもここで走っているお爺さんと案の定顔を合わすことになり、しかもお爺さんはかなり速いスピードだったので、こちらが展望台に向かうまでに何回もすれちがうこととなった。
ちょっと色気がある三十五、六の婦人がベンチにすわっておそらくぼくがもっているのと同じポータブルゲーム機をいじっていたので、ぼくは展望台に登るのを中止して、斜向かいのベンチにとりあえず腰掛けたのだが、その後お爺さんはぼくがすわっている目の前を一度通過していったけれどもそれからはいつまで待ってもお爺さんは走ってこなくて、ぼくはお爺氏はこんなに遅いタイムで散歩コース一周を走るわけがないことや、この程度の距離でランニングを終了してしまうほど常識あるお爺ではないということを知っていたので、もしかしたら、お爺さんになにかアクシデントのようなことが起こったのではないかと、だんだん心配になってきた。
というわけで、色気のある婦人がどこかへ行ってしまうのを、
「おれのゲーム機みせて、声かけてもよかったかな――」
と握り拳をつくりつつ見届けたのちにベンチから立ち上がって、
「イカンガーさーん!」
とお爺さんの名前を暫定的に呼びながらお爺氏が通常やってくる方向にともかく歩いていったのだけれど、散歩コースを半周してもお爺さんは見当たらなかったので不安感はさらに強くなり、だからいちおう、
「イカンガー、知んねぇ?」
と暇そうにしていた白い老猫にもきいてみたのだった。
老猫はこちらを一瞥するとすぐまた目を閉じていたが、尻尾は不自然な方向に向けていた。で、その方向を見ると、
「ウォンチュ♪」
お爺さんは展望台の前のベンチあたりでクレハピさんとお話ししていた。




