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その15
図書館に行くとタカシナさんがちょうどレファレンスのポジションにいたので、ぼくはまっすぐそちらに行って、さっそくヒデタ支那虎について調べてもらった。しかし××市立図書館には支那虎のカセットが二つほど置いてあったが、
「どっちも、いまさっき出ちゃいました」
とのことなのであった。
「予約も入っているから一ヵ月くらい先にならないと借りられないかもしれない」
「そうなんだね」
「予約、入れておきますか?」
「いや。いま借りられないのだったら、それはそれでいいです」
タカシナさんとそんなやりとりをしていると、そのうちどこからかご高齢の方がやって来て、タカシナさんに質問のようなことをしだしたので、ぼくはタカシナさんに、
「じゃあ、どうも」
と言ってレファレンスのコーナーからはなれた。
このあとのぼくは、せっかく図書館に来たのだからと思って公園にすぐには引き返さずに、
「つづき読むか」
ということになっていたのだけれど、このところ読んでいるバルザックをもよりの丸椅子にすわって黙々と読んでいると、ポジションが変わったのか? さっきレファレンスコーナーでヒデタ支那虎を調べてくれたタカシナさんが本の整理をするふりをしながら、ツツツツゥーッとぼくのそばに来て、
「来週の土曜日、〈三途の川〉にヒデタ支那虎がやってくるよ」
と耳打ちしてくれた。
それでぼくは、
「あのう、哲学関係の本はどのあたりにあるのですか?」
とタカシナさんにきいて、
「えーと、哲学関係はこちらですねぇ」
と大事を取って移動していたのだけれど、その哲学のコーナーで、
「ないなぁ」
「ないですねぇ」
などと演技しながらタカシナさんにくわしくそのことをきいてみると、なんでもタカシナさんの友だちにヒデタ支那虎の大ファンの方がいるのだそうで、それで来週の土曜日は、その友だちの付き合いでタカシナさんも〈三途の川〉に行くのだという。
「よかったら沢倉さんもいっしょに行きませんか?」
「えっ! そそそ、それは、ぜひぜひぜひ!」
「よかった」
「でもタカシナさんのお友だちさんにわるくないかな?」
「それは平気だと思う。ティッシュ綿棒のこと話したら、会ってみたいなって言ってたから」
「お友だちは何人来るんですか?」
「わたしも含めて女の子三人」
「ああ、そうですか」
「大丈夫?」
「もちろん。しかし女子三人なんて、夢のようだな……」
タカシナさんと〈三途の川〉に行く約束をしたあとは妙に気持ちが高ぶってしまって、読書はおろか、ただすわっているのもきわめてきびしくなっていた。というわけで、ぼくは〈なかよしおともだち公園〉にもどることにする。
返却された本を元の棚にもどしていたタカシナさんに小さく手を振ってみると、タカシナさんもこちらに素早く手を振ってくれた。




