取り残されたのは俺だった
「ぎゃぁぁぁ……」
その日は、国中の人々が悲鳴を上げていました。
その日は、誰も仕事ができませんでした。
ローラの脳内直接教育が始まったからです。
0歳の子どもにまで実施したらしい。
やりすぎじゃない?
かしこい子が育ちそうではあるけども……。
副作用はないんだろうか?
翌日、国民は新しいインフラの使い方はもちろん。
文字の読み書きと計算までを習得していました。
急に子どもが話し出したと歓喜する親も多かったらしい。
うちに居候しているドドソソ・ララソが自慢をしにきた。
「朝起きたら、計算が得意になったんじゃ」
「へぇ」
「九九も暗唱できるで」
九九も教えてたんだ。
「円周率もルート2も小数点以下30桁まで言えるで」
マジか!? 俺、そこまで言えないぞ。
俺も受けるべきだったのだろうか。
……いや、30桁まではいらないな。
というか……それを0歳にまで教育したの?
ローラ、絶対やりすぎだって……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方その頃、国のあちこちではエーティ・エムワンが稼働し、ダウト王国通貨はベスティア王国通貨「ガルド」へ置き換わり始めていた。
「回収したダウト王国の通貨、どうしたらいいと思う?」
「不純物が多すぎて、溶かしても使い物にならへんで。
金貨なんて、表面に金箔貼ったようなもんや」
とエーティ・エムワン。
なるほど、ゴミ同然ってことか。
「隣国に、こっそりバラまいたらおもしろそうですわぁ~」
「それは、おもしろそうじゃな」
ローラの悪戯提案に、ベスティア王(魔王)ミカンまで乗り気になってしまった。
こうなると、もう誰にも止められない。
この悪戯作戦は実行されることになった。
ダウト王国には、
落とし穴をたくさん掘ると幸せになるという謎の信仰がある。
そのため、国中に落とし穴が掘られている。
しかも、落とした人数が多いほど、
幸せになるということになっているので、
物流が阻害され、今は、馬車は使われていない。
その落とし穴に、いらなくなったダウト王国の通貨を
バラまいていこうという悪戯だ。
まぁ、この国に迷惑はかからないし、
それを手にした人もよろこんでくれるだろうから、
止める道理はなさそうだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
翌日、作戦が実行に移された。
ドローンが、落とし穴を探しては、
そこにダウト王国の通貨を落としていった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
数日後、その効果が伝わってきた。
落とし穴には、いつの間にかお金が湧いてくる
という都市伝説が広まっているとか。
実際に落とし穴で金を拾った者が現れ、
あっという間に口コミで広まったらしい。
その結果、ダウト王国内では、
さらに落とし穴が増えているそうだ。
もう平地を探す方が難しいんじゃないだろうか。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
一方で、俺は国内の有力商人たちを集めていた。
ベスティア王国との交易を始めるための商談会だ。
会場には、
・カレーやラーメン、ポテチなどの加工食品。
・コーラなどの飲料。
・トイレットペーパーやプラスチック製の日用品。
ベスティア王国産の商品がずらりと並んでいた。
商品だけではない。
港まで向かう船もまとめて手配する。
商人たちは、新しい商品に目を輝かせている。
こちらから売れるものは、オリハルコンと、ロドスの灰、そしてネコ。
ロドスの灰は、《フェイク》によって生まれた特産品だ。
畑に撒くだけで、その日に収穫できるという、とんでもない代物である。
ネズミ対策で大量投入したネコは増えすぎてしまった。
売れなければ去勢も考えないといけない。
あれ?
国道沿いはガス化したんだっけ。
灰が減るじゃん。
……まぁ、他の町があるか。
予想通り、多くの商人が商品と船の契約を結んでいった。
ネコ獣人のゴロちゃん(ローラ様ファンクラブ)が、誰もローラに近づけないよう見張っていた。
俺はゴロちゃんに粛清されないよう、ローラを見つけるたびに逃げ回っていた。
おかげで半日もせずクタクタだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
とりあえず、経済対策はこんなところだろうか。
いずれは、国内でラーメンやカレーが作られるようになってほしい。
識字率を向上するために、学校制度を作りかけていたが、脳内教育のおかげで必要なくなってしまった。
学校を別な用途に使わないといけないな。
そういえば、ベスティア王国って、
うちの国と文字や言葉は一緒なんだっけ?
……嫌な予感がした。
不安は、的中した。
気がつくと、まわりのみんなは、知らない言葉を話していた。
ドドソソさんだけは、俺に合わせて話してくれていたらしい。
え?、知らないの俺だけ?
えぇぇぇ!?
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