知らない軍艦が来た
「知らない軍艦が近づいています!」
そんな一報に、城の中がザワついた。
昨日までは、言葉に困っていた俺だが、
昨晩、脳内教育を受けた。
外国語も話せるようになった……らしい。
……たぶん。
教育後に試したことないから、不安だけど。
「軍艦」と言われていた。
ならば、そういう武装がついているということだろう。
俺たちは「地下鉄」で、急ぎ港に向かった。
場合によっては、《フェイク》で対応する覚悟もあった。
◇ ◇ ◇ リベル港 ◇ ◇ ◇ ◇
遠くに帆船が見えた。
中世の大陸間航行をしてた頃の外見を思わせる。
先日のコンテナ船ほどじゃないが、
この世界にしては大きな方ではなかろうか。
船体が茶色いので、木造船かもしれない。
船の側面には、大砲のようなものが、いくつか顔を出していた。
近づきすぎないように、一定の距離を保って停泊している。
「どこの船かわかるか?」
全身機械のナニワ機甲師団長に聞く。
ドローン部隊も指揮する彼なら、何かわかるかもしれない。
「あれはアスヴァル王国でんな。隣国の隣国ですわ」
なるほど。
「魔王領……じゃなかった、
ベスティア王国とも取引あるところ?」
「うちでも、オリハルコンとウサギやオオカミの毛皮は買うてますな」
「いきなり、なぞの軍港ができたから偵察に来たんちゃいますか」
軍港?
今、軍港って言った?
辺りを見渡してみる。
巨大なレーダーサイトが複数。
レールガンを備えた砲台がいくつも。
ドローン部隊の地下格納庫まで。
知らない間に、やばいことになってやがる。
「えぇ? いつの間に?」
この前、来た時、なかったんだけど。
「作ったばかりですわ。
まだ使うたことないんですわ。
いい機会ですし、試し撃ちしてみます?」
物騒なことをいいやがる。
とても試し撃ちをしたいらしく、この後、何度もお願いされた。
「ダメだから。絶対ダメだから」
「いけずやなぁ」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ベスティア王国(魔王領)と取引があるってことは、
相応の現代技術にも触れてるだろうし、
なんだか怖いんだけど……。
「こっちに敵意はないって知らせる方法はない?」
「白旗とかですか?」
「それだと降参じゃないの?」
「一応、敵意がない合図や思うたんやけどな。
他やと、
白い煙をたくと『安全に入港できる』合図で、
黒い煙をたくと『近づくな』って合図らしいで。
ファンファーレを演奏するゆうのもあったかいな」
「とりあえず、白い煙焚いてみようか」
「承知しました」
いつの間にか近くにきていた国軍(元領軍)兵士が、
行動を開始した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
アスヴァル王国の軍艦は、
こちらの白煙を確認すると、
応じるように白旗を掲げ、
ゆっくりと港へ入港してきた。
オオカミの紋章が描かれた国旗だ。
ちょっとカッコイイ。
軍艦からは、何人かの人が降りてきた。
俺が挨拶に伺おうとしたら、ズイッとライナが前に出た。
「ようこそ、リベル王国へ。
この国で外交を任されています、ライナ・リベルです」
そう言って、ライナは握手を求めた。
いつの間に外交官に?
アドリブってヤツか?
それにしても、シレッと俺の姓を名乗るのやめて!
勘違いされるから、やめて!
「あちらにおられるのが、
我が国の王、アーク・リベル国王陛下です」
いつの間に、そういう話し方を?
先日の国民全員への脳内教育の影響か?
おぜんだてされたので、俺も前に出る。
まずは、向こうの挨拶を待っていたのだが、
皆、ひれ伏している。
あ、偉い人が先に話さないといけないんだっけ。
こういう時の王様って、
少し威厳を出して話せばいいんだよな?
「リベル王国の王、アーク・リベルだ。
皆、面を上げてもらいたい」
こんな感じかな。
「我が国は建国したばかりで、
まだベスティア王国としか国交がない。
是非とも、末永いおつきあいを願いたい」
……で、締めたいところだけど。
「だが、軍艦でのご来訪ゆえ、
何か急ぎのご用件かと思ったのだが」
軍艦で来た理由くらいは聞いておきたい。
「これは失礼いたしました。
我が国は、新たな港が築かれていたので、
状況を確かめるため、お伺いした次第です」
まぁ、一夜城ならぬ一夜軍港だ。
実際、俺もさっき知ったばかりだ。
「なるほど」
相手は一度うなずくと、
真剣な表情になった。
「そして、もう一つ理由があります」
「もう一つ?」
「今、我が国アスヴァル王国は、
隣国ダウト王国から侵略を受けているのです」
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