敵が来たので城ごと埋めました
「な。何だ? 何が起こった??」
大きな揺れが襲った。そして、すごい勢いで下に沈んでいく。
「あ、ごめん。これ、いじちゃった」
とライナが、何かのレバーを両手で1本ずつ握っていた。
そこには、
『敵が攻めて来た時に、2本同時に操作するのじゃ』
という貼り紙がしてあった。
何? この沈んでいるの仕様なの?
窓の景色を見ていると、周囲に変化はない。
この城だけが沈んでいる。
「1分で完全に地下に、2分でもっと地下に沈みますわぁ~」
速くない? 時々、耳抜きしないといけないんだが?
「これ以上速くすると、鼓膜やぶれる人がいたので、
ここまでの速度にしてますわぁ~」
やぶれる寸前なの? 大丈夫なの?
「地上50階が完全に地下に収納されるってこと?」
「その通りですわぁ~」
確かに、有事の時には安全かもしれないけど。
「今、この47階は、どのあたり?」
「まだ10階ですわ」
「え?」
「1階部分が地下100階になるまで降りますわぁ~」
「長っ!!」
「それよりも、敵の情報見せて!」
ベスティア軍(魔王軍)の偵察ドローンからの
映像と音声が、機甲師団長ナニワの頭部からのプロジェクタで表示される。
クフィール王国軍が向かってきている。
複数の馬車がステージを引っ張っている。
赤髪のファリスを先頭に、
それぞれ髪色の違うファリスが1人ずつ、
ステージ上で、
何やらキレッキレのダンスを踊っている。
その後ろには、神官たちがぞろぞろと続く。
彼らは徒歩なので、進軍は早くなさそうだ。
前回の侵攻の時は、
あのダンスが「MPを奪うふしぎな踊り」で、
瞬間移動で、こちらの塀を無視して進行してきた。
念のため、
「クフィール王国と勇者は瞬間移動できない」
という「ウソ」をついた。
澄んだ不思議な音が脳内に響いた。
空気が一瞬入れ替わる感覚がした。
俺の「ウソ」が、この世界に作用した合図だ。
これで敵が瞬間移動してくる危険はなくなった。
気がつくと、外の景色は何も見えなくなっていた。
下に沈む感覚もなくなった。
この城は、完全に地下に潜ったらしい。
敵に異常事態が発生した。
皆、慌てている。
ファリスたち(青髪のファリス、緑髪のファリスなど)が、
バタバタと倒れだした。
頭を抑えている。
まるでMP切れの時のような症状だ。
赤髪のファリスだけが無事だった。
どうやら、赤髪のファリスは、他のファリスのMPを奪い、戦闘不能の状態にしてしまったようだ。
何してんの? あいつら。
赤髪のファリスは何度も魔法を使おうとする。
だが発動しない。
でも、そのたびにMPを消費している。
そして、そいつもMP切れに陥った。
こうして、勇者ファリスたちは、何もできずに撤退していった。
何だったんだろうね!?。
急に床が上に上昇しはじめた。
危機が去ったとして、城が元の高さに戻ろうとしていた。
大臣決めの作業を再開することにしよう。
「ところで、この者を運輸大臣にして、王都までの道路を整備したいですわぁ~」
そう言って、ローラがひとりの職人を前に出した。
どこで拉致ってきた?
「この者は、土地の買収がとてもうまいので、王都から代官館までの道路がサクサク作れますわぁ~」
「道路と一緒に電気も引きますわぁ~」
「「「電気!!」」」
代官たちが食いついてきた。
以前の領主館で、エアコンとか、照明とか、冷蔵庫などの家電が備わっていたので、領主館にくるたびに、電気の虜になったらしい。
「「王様、すぐ任命しましょう」」
「まぁ、有能ならいいけど……」
「それじゃ、さきほどの場所に道路お願いですわぁ~」
「わかりました」
何やら、すでに候補の場所は連絡済みらしい。
「ところで、何て言う人?」
「あ、申し遅れました。
私、ジア・ゲサンと言います。よろしくお願いします王様」
ん?
妙に不吉なワードを聞いた気がしたが……。
気のせいだよね。
「あぁ、よろしく頼む。え~と、地上げ…じゃなくて、ゲサン大臣」
あれ、そういえば……。
戸籍も作り直さないといけないのか。
「できてますわぁ~」
「いつの間に……。いや、どうやって?」
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