犯人の名前は、アーク・リベル
=犯人の名前は、アーク・リベル=
「え? 俺、逮捕されるの? え? 違うの?」
憲法を発布してから、悪いと定めたことを犯した人たちがたくさん捕まったらしい。
そこまでは、想定内だった。
獣人を人と扱わなかった罪。
井戸にゴミを捨てた罪。
盗みの罪。
人殺しの罪。
酷いな。全員許せないヤツばかりだ。
こんなのが放置されてたの?
一体何で?
全ての事件の犯人の名前は「アーク・リベル」だった……。
「え? まさか全部?」
どういうこと?
俺、そんな記憶ないんだけど。
「国王の人気にあやかりたいと、改名する人が増えてるらしいわ」
あぁ、俺と同じ名前の人なのね。てか増えてるんだ?
俺と同じ名前だったので、罪に問うていいのか保留にされていたらしい。
「名前って勝手に変えられるの?」
「ダメって法律はないですわぁ~」
そう言って、ローラはふふっと笑った。
確かに法律はない。
というか作ってない。
さすがに憲法にそんな細かいことは書けない。
俺の名前に改名するのはいいが……。
「俺の名前で悪事をするのはやめて欲しいな」
「あんたの名前で悪事を働けば、目をつぶってもらえるんじゃないかとか」
「とか?」
「あんたの名前を出せば、あんたの顔を知らないヤツを
騙せるんじゃないかとか」
やめてぇ~。
ウソつきの俺の名前を語ってウソはつかないで~。
「これだと選挙なんてできそうにないな」
「大丈夫ですわぁ~」
そう言ってスマホを見せる。
ベスティアの選挙システムだ。
候補者の顔の横に名前と、所信表明が書いてある。
「そっくりさんが、同じ名前だったらどうなるの?」
画面を指さす。
よく見るとID番号も表示されていた。
「なるほど、こうやって見分けるのか」
数日後、国内各地から「自称アーク・リベルさん」が使い込んだ諸々の請求書が送られてきた。
エッチなお店のものまで入ってやがる。
エリナたちにジロリと見られた。
「いや、行ってないよ。『自称アーク・リベルさん』だよ」
「ホントだよ」
「ホントにぃ~」
信じてないな。こいつら……。
代官たちに、真犯人を捕まえて支払わせるように指示したのだが、同じ名前が多すぎて捜査が難航しているらしい。
「とりあえず、あんたと同じ名前にできないようにしたら?」
「そこまで憲法に書けと?」
「その方が安心でしょ」
「まぁ、そうするか……」
こうして、憲法の改正案を交付したのだが……。
すでに俺の名前に改名した人がたくさん捕まった。
いい意味で、あやかりたいと思った人が予想以上だった。
「多すぎだろ」
ため息が出るな。
「罪にしなくていいから、元の名前に戻すようにして」
俺は代官たちに指示した。
なのに、なぜか――。
「え? 未払いの罪人まで釈放しちゃったの?」
「王様が、名前戻せばいいって……」
言ったけど……。
そういう意味じゃねぇ。
「マジかぁ……」
「未払いのヤツは本人に払わせてよ」
「名前変わってしまいましたが……」
「そこは、なんとかして……」
もしかして払わないといけないんだろうか?
「その必要はありませんわぁ~」
タブレットを見せる。
心の声が見えるヤツだ。
=王様の名前にしとければ王様が払うだろう=
=せっかくだから架空の請求書も付け足すか=
「ね?」
「そうだな……」
俺は国民にカモだと思われているんだろうか?
ちょっと心配になった。
それでも、俺は選挙の準備を進めている。
大丈夫なのか?
……これ。
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次回
『議員を募集したのだが……』
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