王様代理より、大事なこと
「自分が王様になったら、代わりにサインしてくれる人を雇います」
「丸投げじゃん」
ライナがツッコミを入れる。
「不採用」
というハンコを押した。
え? このハンコ必要?
もしかして、面接がずっと続くと思ってる人が発注したの?
今回の応募者も、ひとクセも、ふたクセもありそうだ。
推薦人については、事前に代官が一次面接で確認済みだ。
俺たちは、その上で最終面接をしている。
「次の人どうぞ」
どこかで見知った顔が入ってきた。
「レイノルド・チャールズ。36歳」
わぁお、元クフィール王国の全軍司令官だ。
「応募理由を教えてください」
「自分でもよくわからないのですが……」
わからないのかよ
「無性に『国のために働きたい』と思いまして……」
真面目か……。
国家に忠実な人だったんだろうな。
「採用で……」
「「「えっ?」」」
ライナや代官たちが、信じられないという顔で見てくる。
そんなにおかしな判断だったかな?
「おい、この調子だとすぐに決まってしまうぞ」
「本当に大丈夫なのか」
う~ん、代官たちのひそひそ声が聞こえてくる。
どうやら、俺の引退が早まるのではと心配してるようだ。
そっちかよ! とツッコミを入れたい気分だ。
しかし、せっかく小声で話してるのに、ツッコミを入れるのも無粋だろう。ここは聞かなかったことにしよう。
「次の人どうぞ」
またも見知った顔が入ってきた。
かつて俺のところで執事してくれてた人じゃん。
「ルディア・スミス。72歳。国政の知識はあります」
いや、知識はみんな平等に脳内教育してるから。
「応募理由を教えてください」
「無性に『誰かの補佐をしたい』と思いまして……」
おまえも同じ理由か。
まぁ、脳内教育もしてるし、危険因子はないのだろう。
「採用で……」
「「「な……」」」
代官たちがざわついている。
「決めるの早すぎないか」
「王様には、まだいてもらわなくては」
「次の人どうぞ」
いきなりスーツを作ったのかな? 借りたのかな?
サイズが合ってないピチピチのスーツの若者が入ってきた。
「ダノン。20歳。法律を勉強しています」
お? 良さそうじゃん。
「この国には憲法も法律もないことを嘆いております」
え? あ? どっちも作ってなかったぁ~
「俺様が王様代理になったら、憲法と法律を整備します」
おぉ、頼もしい。ちょっと一人称が気になるけど。
「採用」のハンコを押しかけたのだが。
「ダノン様法を作り、
自分を甘やかしてくれる国を作りたいと思います」
ダメな人じゃん。採用しちゃいけない系の人じゃん。
「不採用」
というハンコを押した。
押したのだが……とても気になることがあり、面接を中断して代官たちと話し合いをした。
「あの……ところで、この国の裁判ってどうしてましたっけ」
「国王に任せています」
あぁ、ですよね。
そういえば回ってくる書類に、そんなのありましたね。
そろそろ司法機関が必要なのでは?
「この国の憲法とか、法律ってありましたっけ」
「作ってませんよ」
あぁ、うん。
そういえば法律を作る機関(議会)も作ってないな。
う~ん。国王代理より、そっちが先な気がする。
ということで、また仕切り直すことにした。
採用しちゃった2人には働いてもらうけども。
「裁判官と議員を募集……。じゃない、選挙で選びます」
「「「え?」」」
脳内教育で、裁判官や議員の知識はあるはずだ。
「それをしちゃうと、王様の引退が早まりませんか?」
「そのつもりだって言ってるじゃん」
「まぁ、王様が言うならやってみましょうか。選挙」
「参政権は何歳以上にしますか?」
「とりあえず『ママに言われた通り』にならない年齢がいいな」
「じゃあ、今回は王様代理同様に20歳以上から始めて、状況を見て変えましょうか」
とスミスさん。いいね。判断が早くて助かるよ。
「次は投票用紙とその回収方法か……」
「スマホでのネット投票でいいと思いますわぁ~。
街頭端末もあるので、そこから投票できますわぁ~」
街頭端末?
ネットカフェみたいなものかな?
「自動集計されるので、お手軽ですわぁ~。
ベスティア王国では、その方式が一般的ですわぁ~」
「それ、お金かかるのかな?」
しっかり者のエリナがツッコミを入れる。
「このくらいですわぁ~」
ローラの見積もりを見て、エリナが即答する。
「それなら大丈夫」
「スマホってみんな持ってるの?」
「普及率はこのくらいですわぁ~」
=120%=
波動砲か……!?
「100%超えてるじゃん」
「ひとりで複数持ってる人がいるんですわぁ」
「逆に持ってない人って調べられる?」
「このくらいですわぁ~」
=0%=
「え? みんな持ってるの?」
「厳密にはこうなりますわぁ~」
=0.00012%=
あ、そうだよね。国民100人じゃないもんね。
「持ってない人は街頭端末からでいいと思いますわぁ~」
「なりすましは大丈夫なの?」
「顔認証で確認しますから大丈夫ですわぁ~。
国民の顔はすべて登録済みですわぁ~」
「なんか怖いな。いつ登録したん?」
「脳内教育のときに、自動的に登録しましたわぁ~」
な、なるほど……
「じゃあ、それで行こう」
「選挙の取りまとめはアークのお仕事ですわぁ~」
立候補者、推薦などの手続きってことだな。
まぁ、やるしかないか。
こうして、リベル王国はじめての選挙を行うことになった。
--------------------------------------------
次回
『王様、引退のために憲法を作る』
--------------------------------------------
お読みいただき、ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけましたら、
★や【ブックマーク】で応援していただけると、
今後の創作活動の励みになります。




